Date: 8月 18th, 2010
Cate: 朦朧体
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ボンジョルノのこと、ジャーマン・フィジックスのこと(その18)

スレッショルドからSTASIS1が、まずステレオサウンドの誌面に登場したのは、53号。
1979年の12月発売の号だ。

STASIS1は、スレッショルド初のモノーラルパワーアンプで、記事には予価1,500,000円となる。
1台の価格だから、3,000,000円。
300万円……、このときもっとも高価なパワーアンプがマークレビンソンのML2Lで、
ペアで1,700,000円だったから、ほぼ2倍。

当時としては、おそろしい価格だったし、こうなるともう購入目標とかではない。
けれど、スレッショルドから800Aをおそらく超えたであろうパワーアンプが登場したのが、
すなおに嬉しかった。

価格もすごいけれど、音もきっと、まちがいなくすごいはず、おそらくこれが最高のパワーアンプであるはず。
そう思っていたし、そう信じていたかった。
ステレオサウンドの記事には、簡単な解説があるけれど、
ステイシス回路が具体的にどういうものかはまったく不明。

このアンプの評価は、井上、山中両氏による対談で行われている。
山中先生は、「一つの理想に近づいたといっていい」とされ、
「まったく誇張感のないところに底力を感じる」とまず発言されている。
井上先生は、パワーアンプの音を表現するのに使う言葉が、通用しない、と断わり、
「本当の意味のナチュラルさ」と表現されている。

コントロールアンプを3機種交換しての試聴では、「このときの反応の速さ」に驚かれ、
これを受けて山中先生は「コントロールアンプが直接スピーカーを鳴らすような感じ」と言われている。

さらに私が個人的に惹かれたのは、井上先生の次の発言。
「4343が、ロジャースのLS5/8と一脈通じる、誇張感のない自然な鳴り方をした」とある。
珍しいことだ、ともいわれている。

ステレオサウンド 53号をお持ちの方ならば気づかれていると思うが、
山中、井上、山中、井上の順で途中まで発言がつづいているが、なぜか最後の発言者も「井上」となっている。
つまり山中、井上、山中、井上、井上となっている。

最後の「井上」とある発言は、山中先生なのか、それとも表記どおり井上先生なのかは、
いまとなっては確かめる術はないけれど、私は、これは井上先生の発言のように受けとっている。

そこにはこうある。
「非常に素晴らしいアンプと思われるでしょうが、今回の試聴ではそこまで判断できせん。」

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