ボンジョルノのこと、ジャーマン・フィジックスのこと(その13)
800Aがステレオサウンドの新製品紹介の記事でとりあげられたのは、41号。
私が「コンポーネントステレオの世界 ’77」といっしょに買った最初のステレオサウンドにて、
井上卓也、山中敬三の両氏の対談形式で登場している。
800Aは250W+250Wのステレオ構成で、Aクラス動作を謳っていた。
まだそのころは詳しい情報が伝わってこなかったようで、井上先生、山中先生の対談の中にも、
「クラスA」とだけ紹介されている。価格は1,110,000円。
GASのアンプジラが499,000円、SAEのMark2500が650,000だったわけだから、
当時の海外製のパワーアンプのなかでもとびぬけて高価なモノだった。
しかもAクラス。それでいて当時の最高出力を誇っていたマッキントッシュのMC2300の300Wにつぐ、250Wの出力。
デザインにしても、アンプジラもMark2500もMC2300もいずれもメーターつきだったが、
800Aのメーターは大きく、それが上下対称に配置されていた。
つまり上側のメーター(左チャンネル用)は上下逆さまになっているわけだ。
デザインも洗練されているように思えて、
とにかくほかのアンプとくらべても、より未来的に私の目には映っていた。
800Aの音について、井上先生は国産アンプのAクラス動作に共通して感じられた
「低域のレスポンスがあまり伸びていなくて、やわらかい音が多かった」のに対して、スレッショルドの場合は
「今までのクラスAのアンプとは違って、力強さのある音をもっていて」、
さらに「妙に硬質にならず、芯はあるのだけれど、やわらかさをもっている」特徴があると。
弦楽器の音については「生の楽器の持っているノイジーな部分も出して」きて、「美化された音ではなく聴える」。
そのことに関連して、山中先生は「ヴォーカルなどを聴いても、そうした感じがある」と発言されている。
なにかほかのアンプとは次元の異るレベルで登場してきたアンプ、という印象を受けたし、
その印象をさらに自分の中で増幅しよう、とくり返し読んでいたわけだ。