ボンジョルノのこと、ジャーマン・フィジックスのこと(その14)
スレッショルドの800Aは、ML2Lが登場するまでのあいだ、マークレビンソンのLNP2と組み合わせて、
その音を聴いてみたい、そしていつかは手に入れたい、と思っていたパワーアンプである。
瀬川先生の800Aに対する評価は高かった。
そして五味先生の評価もなかなかだったのが、私の中では最終的な決めてになっていた。
ステレオサウンド 47号に、続・オーディオ巡礼の一回目が載っている。
五味先生が訪問されたのは、奈良の南口重治氏。
ここでの五味先生の文章の中に、こんな一節が出てくる。
*
南口邸ではマッキントッシュではなくスレッショールドでタンノイを駆動されている。スレッショールド800がトランジスターアンプにはめずらしく、オートグラフと相性のいいことは以前拙宅で試みて知っていたので南口さんに話してはあった。
*
ここを読んだとき、「800A、やっぱりいいんだ!」と即思った。
しかも南口氏は、タンノイ・オートグラフだけでなく、JBLの4350のウーファーも800Aで駆動されている。
その4350の音を聴かれ、「心底、参った」と五味先生は書かれている。
つづけて、こう書かれている。
*
テクニクスA1とスレッショールド800で鳴らされたJBL4350のフルメンバーのオケの迫力、気味わるい程な大音量を秘めたピアニシモはついに我が家で聞くことのかなわぬスリリングな迫真力を有っていた。ショルティ盤でマーラーの〝復活〟、アンセルメがスイスロマンドを振ったサンサーンスの第三番をつづけて聴いたが、とりわけ後者の、低音をブーストせず朗々とひびくオルガンペダルの重低音には、もう脱帽するほかはなかった。こんなオルガンはコンクリート・ホーンの高城重躬邸でも耳にしたことがない。
*
このときマークレビンソンのML2Lは登場している。すでに高い評価を得ていた。
でも、この五味先生の文章によって、私にとって800Aは、また光り輝くことになった。
1978年の夏のことだ。