ボンジョルノのこと、ジャーマン・フィジックスのこと(その11)
岩崎先生によるL300とGASのアンプの組合せの写真は、「ツラ構え」という言葉を使いたくなる感じで、
たとえば瀬川先生の4343とLNP2とSAEのMark2500の組合せの写真とは大きく印象が異る。
この当時は、それぞれの製品の内容についてほとんど知らなかっただけに、
よけいに写真全体から伝わってくる雰囲気は第一印象として強烈だったのかもしれない。
どの組合せも、レコードを聴くための装置なのに、
それぞれが集まると、その組合せ独自の雰囲気を醸し出しているし、
まったく別の目的の装置のようにも見えてくる。
GASのアンプのツラ構えはとにかく強烈だった。
そして、ステレオサウンド 43号に載ったアンプジラやテァドラへの、各評論家の文章を読んでいくと、
ますます、少なくともそのとき思いこんでいた、私の求めている音は違う感じだな、ということがわかる。
瀬川先生はアンプジラIIについてだけ書かれている。
「一聴して重量感と暖かみを感じさせる腰の坐りのいい、素晴らしく安定感のある音質が特長。総体に音の芯をしっかり鳴らすため、ことに高音域でも線が細くなったり弱々しくなったりせずに、悠々たる落ち着きをみせる。コンストラクションは飾り気を排したいかにも実質本位という感じで、機能に徹した作り方。」
菅野先生はテァドラとアンプジラIIの両方について。
「ユニークなネイミングもさることながら、あらゆる点でオリジナリティに溢れた個性的製品である。マーク・レビンソン同様、これも、ガスの社長、ジム・ボンジョルノ氏との対話のできるパースナリティである。DCサーボループ・アンプという最新の回路設計に、よく練られたサウンドの輝きが感じられ、豊かで、弾力性のあるグラマラスなサウンドである。デザインも個性的であるが、見るほどに味が感じられる。」(テァドラ)
「グレート・アメリカン・サウンドのアンプジラは改良型でIIとなった。いっそう、そのサウンドには磨きがかけられ、豊かで、ねばりのある血の気の多い音は圧倒的な表現力をもつ。少々体力の弱い人は負けてしまいそうな情熱的なサウンド。最新最高のテクノロジーに裏づけられたアンプはもちろん抜群の特性をもつ。」(アンプジラII)
やっぱり「コンポーネントステレオの世界 ’77」で感じた印象は、けっこう当っていた、
やっぱり私が聴きたい音──つまり、女性ヴォーカルを、ひっそりとしっとりとぬくもりのある音──ではない、
GASのアンプはすぐれたアンプだろうけど、その名前(Great American Sound)があらわしているとおりなのだ、
そう強く思いこんでしまった。GASのアンプは、男性的な音だ、と。