瀬川冬樹氏とスピーカーのこと(その21)
パラゴンは背の高いスピーカーシステムではなく、
独特のユニット配置からしてもいえるのは、むしろ背の低いスピーカーシステムであるということだ。
ウーファー、スコーカー、トゥイーター、これらのうち二つのユニットの中心は同じ高さに位置していて、
トゥイーターのみがやや高いところに取り付けてある。
このことから連想するのは、LS3/5Aのことであり、
瀬川先生のLS3/5Aの聴き方のことである。
ステレオサウンド 43号で、
《左右のスピーカーと自分の関係が正三角形を形造る、いわゆるステレオのスピーカーセッティングを正しく守らないと、このスピーカーの鳴らす世界の価値は半減するかもしれない。そうして聴くと、眼前に広々としたステレオの空間が現出し、その中で楽器や歌手の位置が薄気味悪いほどシャープに定位する。》
と書かれている。
この「薄気味悪いほどシャープに定位する」のは、ミニチュアライズされたものである。
《あたかも眼前に精巧なミニチュアのステージが展開するかのように、音の定位やひろがりや奥行きが、すばらしく自然に正確に、しかも美しい響きをともなって聴こえる》(ステレオサウンド 45号)
《このスピーカーの特徴は、総体にミニチュアライズされた音の響きの美しさにある》(ステレオサウンド 46号)
瀬川先生がLS3/5Aについて書かれたことと、
ステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’75」に掲載されている鼎談で述べられていること、
このふたつは切り離せないことであり、
それらのこととパラゴンを瀬川先生が59号で「欲しいなあ」と結ばれていること、
さらにステレオサウンド別冊「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」の巻頭
「いま、いい音のアンプがほしい」の書き出し、
私の中では、すべてつながっている。