ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(その15)
1987年か88年ごろだったと記憶している。
黒田先生のリスニングルームにうかがったときに、ケーブルの話になった。
こんなことを黒田先生はいわれた。
「こういうケーブル(金子式ケーブルのこと)にステレオサウンドが否定的なのはわかっている。
でも、ぼくはこのケーブルを使うのは、音のためだ」
ずいぶん昔のことだから細かなことまで正確に記憶しているわけではないが、
概ねこんなことをいわれた。
このころの黒田先生のスピーカーはアポジーにはなっていなかった。
アクースタットのModel 6だったこととも、金子式ケーブルを使われていたこととは関係しているはずだ。
黒田先生が金子式ケーブルをいつごろから使われなくなったのかは、
そのあたりで私はステレオサウンドを離れてしまったのでわからない。
おそらくスピーカーをアクースタットからアポジーのDivaに換えられてからではないだろうか。
黒田先生の音の評価を読んでいて感じるのは、音楽の聴き手としての強さである。
この強さはオーディオマニアからすれば、憧れる強さでもある。
少なくとも私というオーディオマニアにとっては、そうであったし、
そういう強い聴き手になろう、ならなければと思ってもいた。