ラックのこと(その5)
ヤマハのラックGTR1Bは、その形からもわかるように、一種の開放管であり、
つまりは開放管としての共鳴・定在波の発生があり、
これを抑えることも、GTR1B固有の音を和らげることにつながっていく。
具体的にはステレオサウンド試聴室ではラック内に、天然素材の吸音材を入れていた。
吸音材といえば、すぐにグラスウールを思い浮べる人もいるけれど、
聴感上のS/N比的にはグラスウールは不適であり、天然素材の吸音材でなければならない。
あまり入れ過ぎてうまくいかないところがあり、
適度の量(意外に少ない量である)は自分で見つけて行くしかない。
最初は思い切りラック内を満たすほどに入れてみればいい。
その状態の音と、何も入れていない状態の音、ほんの一枚だけ入れた状態の音、
中間ぐらいに入れた音、それぞれの音を聴いたうえで、増やしたり減らしていく。
GTR1Bは木製の開放管である。
板厚は50mmだし、素材は一種類。
それゆえに固有音があるところに集中しやすいともいえるが、
逆にとらえれば、固有音が分散されにくいわけであり、
固有音の正体(どの帯域にそれがあるのか)をしっかりと見極めれば、
その対策(固有音を和らげること)は、それほど難しくはない、といえる。
複数台のGTR1Bをぴったりとつけずに離して置くのも、問題を複雑化しないためである。
だからステレオサウンド試聴室では棚板を使うことは一度もなかった。
ラック内部に、何かモノをいれるということもやらないようにしていた。
あくまでも天板にオーディオ機器を置く、ただそれだけのために使っていた。