同軸型はトーラスなのか(その14)
高帰還の真空管パワーアンプとして有名なウィリアムソンアンプのNFB量は24dBである。
真空管アンプ全盛時代は、これでも多量のNFBであった。
トランジスターアンプでは、かなり少なめのNFBでも20dB前後はかかっているだろうし、
40dB、60dB以上、100dBこえるNFBがかかっているアンプもある。
そういう時代に登場したサイテーションXXの9dBのNFB量は、そうとうに低い値である。
サイテーションXXは、 なにもNFB量を減らすことだけで
TIM歪、IIM歪、PIM歪の発生を抑えようとしているわけではない。
いくつもの回路上の工夫が凝らされているはずだ。
そのひとつが、あまり知られていないが、サイテーションXXは反転アンプであることだ。
この点は見逃せない。
サイテーションXXは、わりと地味な印象をまとったパワーアンプではあるが、
ビスの締めつけトルクを管理した、おそらく世界初のアンプであるし、
設計に携わったマッティ・オタラ博士はフィンランド人、ハーマンカードンはアメリカのブランド、
製造していた新白砂電気は日本のメーカー、という、グローバルなアンプでもあった。
それほど人気の高さはなかったが、堅実な作りのアンプであったし、
このアンプは、井上先生のお気に入りのパワーアンプでもあった。そして自宅でも使われていた。
サイテーションXXが現役の時、
私は、サイテーションXXの音を地味に感じていた。面白みのない音だ、とも思っていた。
それがいまは、意外といい音だったのかも、と思い直している。
いま聴いたら……、とも思う。
井上先生は、少し手直ししてやると、そうとうにいいアンプだ、と言われていたし、
新白砂電気で、このアンプに関わっていた人の話でも、
いくつかの箇所を変えれば、ものすごく良くなる、ということだった。