Date: 11月 21st, 2013
Cate: マルチアンプ
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マルチアンプのすすめ(その3)

HIGH-TECHNIC SERIES-1「マルチスピーカー・マルチアンプのすすめ」から四年後、
ステレオサウンド 58号が出た。
新製品の紹介ページに、瀬川先生による4345が出ている。

そこにはこうある。
     *
 ひととおりの試聴ののち、次にバイアンプ・ドライヴにトライしてみた。ステイシス2を低域用、ML2L×2を中域以上。また、低域用としてML3Lにも代えてみた。エレクトロニック・クロスオーヴァーは、JBLの♯5234(♯4345用のカードを組み込んだもの)が用意された。ちなみに、昨年のサンプルでは、低音用と中〜高音用とのクロスオーヴァー周波数は、LCで320Hz、バイアンプときは275Hz/18dBoctとなっていたが、今回はそれが290Hzに変更されている。ただし、これはまあ誤差の範囲みたいなもので、一般のエレクトロニック・クロスオーヴァーを流用する際には、300Hz/18dBoctで全く差し支えないと思う。そこで、念のため、マーク・レヴィンソンのLNC2L(300Hz)と、シンメトリーのACS1も併せて用意した。
 必ずしも十分の時間があったとはいえないが、それにしても、今回の試聴の時間内では、バイアンプ・ドライヴで内蔵ネットワーク以上音質に調整することが、残念ながらできなかった。第一に、ネットワークのレベルコントロールの最適ポジションを探すのが、とても難しい。その理由は、第一に、最近の内蔵LCネットワークは、レベルセッティングを、1dB以内の精度で合わせ込んであるのだから、一般のエレクトロニック・クロスオーヴァーに組み込まれたレベルコントロールでは、なかなかその精度まで追い込みにくいこと。また第二に、JBLのLCネットワークの設計技術は、L150あたりを境に、格段に向上したと思われ、システム全体として総合的な特性のコントロール、ことに位相特性の補整技術の見事さは、こんにちの世界のスピーカー設計の水準の中でもきめて高いレヴェルにあるといえ、おそらくその技術が♯4345にも活用されているはずで、ここまでよくコントロールされているLCネットワークに対して、バイアンプでその性能を越えるには、もっと高度の調整が必要になるのではないかと考えられる。
 ともかくバイアンプによる試聴では、かえって、音像が大きくなりがちで、低音がかぶった感じになりやすく、LCのほうが音がすっきりして、永く聴き込みたくさせる。
 ほんとうに良いスピーカー、あるいは十分に調整を追い込んだバイアンプでの状態での音質は、決して、大柄な迫力をひけらかすのでなく、むしろ、ひっそりと静けさを感じさせながら、その中に、たしかな手ごたえで豊かな音が息づいている、といった感じになるもで、今回の短時間の試聴の枠の中では、本来のLCネットワークのままの状態のほうが、はるかにそうした感じが得られやすかった。
     *
私は、この瀬川先生の文章を読んだ時、
まだマルチアンプシステムの音をきちんと聴いたことはなかった。
オーディオ店で店頭で4350が鳴っているのは聴いたことはあっても、
それは決していい状態でなっているとはいえず、マルチアンプの可能性を感じとることはまったくできなかった。

とにかく「マルチスピーカー・マルチアンプのすすめ」でも、
マルチアンプシステムの可能性は大きいけれど、
「相当にクレイジイな」マニアのためのものと書かれているし、
4345の試聴記でも、優れたLCネットワークをもつスピーカーシステムの場合、
そうたやすくバイアンプ(マルチアンプ)にしたからといって、トータルの音がよくなるとはいえない、
そのことがはっきりと伝わってくる。

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