Date: 11月 11th, 2013
Cate: アナログディスク再生, ショウ雑感
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2013年ショウ雑感(アナログディスク再生・その10)

カンターテ・ドミノも聴いた、グールドのゴールドベルグ変奏曲も聴いた。
それにノイズの出方も充分にチェックできた。
これでテクダスのAir Force Oneの実力は、すべてとはもちろんいえないけれど、
相当はっきりと掴めた、といえる。

となると、そのあとに架けられたレコードを聴いている時は、
私の頭の半分ほどは妄想に使われていた。

たとえばワーグナーのパルジファル。
クナッパーツブッシュのバイロイト祝祭劇場でのライヴ、
カラヤンのスタジオ録音。
どちらがより名盤か、ということではなく、
クナッパーツブッシュのパルジファルをかけるアナログプレーヤーとしては、
私はなんら迷いなくEMTの927Dstを選ぶ。

927Dstで聴くクナッパーツブッシュのパルジファルは、
バイロイトに行ったことのない者にさえ、
バイロイト劇場の音とは、きっとこの感じそのままなんだろう、と思わせるだけの強い説得力がある。
そこで行われたクナッパーツブッシュのパルジファルにふさわしい、と迷いもなく思わせるのは、
927Dstの、このプレーヤーでしか聴けない音のみである。

だがカラヤンのパルジファルとなると、そのへんの事情は違ってきて当然である。
カラヤンの演奏の精妙さを、927Dstは十全に再現してくれるかは、
いくら927Dstに惚れ込んでいる私でも、そうはいえないところがあるのは認める。

カラヤンのパルジファルをかけるプレーヤーとしては、圧倒的にAir Force Oneだろう。
グールドのゴールドベルグ変奏曲でのアリアのハミングを、
ああも自然に、しかも特に耳を欹てなくとも容易に聴きとれるのは、
しかもそれがうなり声ではなくハミングだといえるAir Force Oneの音を聴いていて、
これでカラヤンのパルジファルを鳴らしたら……、
そう思えるほどのAir Force Oneの精妙さであり、
大編成のものを再生するに不可欠の安定性でもあった。

パルジファルのレコードは、クナッパーツブッシュのだけ、とか、
カラヤンのだけ、とか、どちらかひとつに決めなくてもいい。
どちらも持っていればいい。
他の指揮者のパルジファルも併せ持つこともできる。

だが、927DstとAir Force Oneの両方をもつことのできる人は、
世の中は広いからいることにはいるだろうが、
どちらかひとつでも自分のモノとできるだけでもすごいことである。

どちらを選ぶかは、パルジファルにおいてどちらを選ぶか、でもある。

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