598というスピーカーの存在(その2)
1980年代に登場した598のスピーカーシステムの重さには特徴があった。
ただ思いだけでなく、重量のアンバランスさが、他の価格帯のスピーカーシステム以上にあった。
とにかくフロントバッフル側が重い。
たいていのスピーカーシステムはフロントバッフルにスピーカーユニットが取り付けてあるから、
フロントバッフル側に重心が偏っているものだが、
それにしてもこのころの598のスピーカーシステムの重心はフロント側に偏りすぎていた。
時代が違うとはいえ、いまのスピーカーのつくられ方からすると、
一本59800円のスピーカーシステムとは思えないほど、物量が投入されたユニットがついていた。
物量投入型のスピーカーユニットは当然重くなる。
その重量を支えるのがフロントバッフルなわけだから、
フロントバッフルも強度を、ユニットの重量増に応じて高めていかなければならない。
しかも598のスピーカーシステムは揃いも揃って3ウェイだったから、
フロントバッフルには穴が3つ開けられ、それだけ強度も低下しやすい。
そのための手っ取り早い手法としてはフロントバッフルの厚みを増すこと。
そうすることでさらに重心がフロントバッフル側に移動することになる。
予算が充分とれる価格帯のスピーカーシステムであれば、
フロントバッフルだけの強度を増すだけにとどまらず、
エンクロージュア全体の強度もバランス良く高めていくだろうし、
重量のアンバランスさは音にも密接に関係してくることをわかっている技術者ならば、
極端なアンバランスな状態には仕上げない。
いくら物量投入がなされていたとはいえ、59800円という価格の制約は大きい。
それが重量のアンバランスさの大きさとなっていたように思う。