Archive for 1月, 2018

Date: 1月 2nd, 2018
Cate: 書く

毎日書くということ(そのあいまに)

菅野先生が50代のころにきいた話がある。
原稿書きに、どうにもいき詰ったときは、洗車する、と。
一心不乱に、洗車に専念して、愛車がピカピカに仕上がると、
不思議と原稿書きが、さきほどのいき詰りがウソのようにはかどる、ということだった。

大晦日と今日は、JBLの075を磨いていた。
預かりものの075だから、一度バラして、というわけにはいかない。
馬蹄型のフランジのついた古い075だから、
ホーンを外すには赤く封印されているのを取り除く必要がある。

中央の砲弾状のイコライザーも、075の背面の銘板を剥さなければ、
取付ボルトが露出しない。

自分の075だったら、ためらわず封印も取り去って、銘板も剥して、
徹底的にやるけれど、預かりものだけに、そこまではできない。

それでも磨ける範囲を磨いていると、菅野先生の洗車の話を思い出していた。

おそらく一度も磨かれていないであろう075だけに、
完全に磨きあげた、というところには到っていない。
暇をみて、ちょいちょいと磨いていこうと思っている。

そういえば、磨くのが趣味というオーディオマニアがいる。
彼が鳴らしているスピーカーは、いわゆる往年の名器と呼ばれているモノ。
おそろしくコンディションのよいモノと、見た人はそう思うだろう。

でも入手した時は、そうでもなかったそうだ。
彼は磨いた。

どのくらいの期間かかったのはきかなかったが、
おそらくいまでも磨いているのだと思う。
その輝きがある。

Date: 1月 1st, 2018
Cate: スピーカーの述懐

あるスピーカーの述懐(その13)

スピーカーは時として不機嫌になる。
理由はひとつだけでないようだし、はっきりとはわからないことがあるからやっかいだが、
誰といっしょに聴くかによって、スピーカーの鳴り方が多く変ることがある。

気にくわない人といっしょに聴いていると、
スピーカーはかなりの確率で不機嫌になる。

私ひとりが感じていることではなく、
世代に関係なく、かなりの人が、そういっている。

ずいぶん前の話だが、あるオーディオ評論家のお宅に、
ある新聞社の人間が訪ねてきた。
なんの連絡もなしにいきなりの訪問である。

そのころの電話帳には、オーディオ評論家の名前で探せば、
電話番号も住所も、たいていはわかった。
それに新聞社の人間ならば、電話帳に載っていなくとも調べる手段はあろう。

いきなり訪ねてきて、音を聴かせてくれ、というような人を相手に、
上機嫌になれる人なんていないだろう。
そのオーディオ評論家は不機嫌になった。

無下にことわれば、新聞に何を書かれるかわかったものではない。
しぶしぶ承知しても、不機嫌であることは変らない。

音を聴かせると、その男は、片チャンネルのドライバーが鳴っていない、という。
そんなことはない、とオーディオ評論家は答える。
その男が来るまで、きちんと鳴っていたのだから。

不機嫌な上に、そんなことをいわれたものだから、ますますイヤな気分になり、
音を聴くどころではない。

しばらくすると、またその男は、同じことをいう。
片チャンネルのスコーカーが鳴っていない、と。

そんなはずはない、とオーディオ評論家はまた答える。

新聞社の男は、やっと帰った。
やっとひとりになって、音を聴いてみると、
確かに新聞社の男の指摘通りに片チャンネルのスコーカーが鳴っていない。
いきなり訪ねてきた男であっても、悪いことをしたな、と思いつつも、
そのオーディオ評論家は、いっしょに聴く人によって、
スピーカーが不機嫌になる──、
どころか鳴らなくなってしまうということがあることをあらためて実感したそうだ。

Date: 1月 1st, 2018
Cate: 日本のオーディオ

日本のオーディオ、これから(NIRO Nakamichiの復活・その5)

井上先生からはNIRO時代の中道仁郎氏についてきいている。
試作品を何度も井上先生は聴かれている。

あることについて指摘すると、翌日には手直ししてくる。
しかも井上先生からの指摘をきちんと理解しての手直しである。
見当違いの手直しではない。

たいしたものだよ、と井上先生は感心されていた。
この話をしてくれたということは、
他のメーカーには中道仁郎氏のような人は、そうそういない、ということでもある。

同じ空間で同じ音を聴いて、オーディオ評論家からの指摘がある。
けれど、その指摘をきちんと理解していないから、
手直しが見当違いであったりする。

結局、きちんと音を聴いていない、としか思えない。
いや、聴いている、という反論があるだろうが、
ならば、なぜ、指摘されたところを手直しできないのか。

NIRO時代、中道仁郎氏はひとりでやられていた、ともきいている。
ひとりなのに、翌日にはきちんと手直しして、次のステップに進む。

一方、他のメーカーはひとりということはまずないだろう。
何人かのスタッフが関っているだろう。
なのに……、といいたくなる違いが生じるのは、
NIROが登場したころだけの話ではなく、それ以前からあったことである。

ということは、いまもある、と見ていいだろう。

とにかく中道仁郎氏が、NIRO Nakamichiを2015年に立ち上げられている。

ナカミチ時代に、スピーカーはなかった。
カセットデッキはあった、コントロールアンプ、パワーアンプ、レシーバーもあった。
けれどスピーカーは、B&Wの輸入元であったぐらいだ。

Date: 1月 1st, 2018
Cate: バッハ

待ち遠しい(2018年を迎えて)

昨年春「老いとオーディオ(齢を実感するとき・その5)」で、内田光子のバッハについて書いた。

内田光子は1948年12月20日生れだから、今年の終りに70になる。
70でバッハを、といっていたのだから、きっと録音してくれるだろう、と期待している。

2019年には、内田光子のバッハが聴けるようになる──、
そう信じている。

Date: 1月 1st, 2018
Cate: オーディオマニア

オーディオマニアの覚悟(その7)

オーディオマニアとして自分を、そして自分の音を大切にすることは、
己を、己の音を甘やかすことではなく、厳しくあることだ。