Archive for category 4343

Date: 5月 13th, 2014
Cate: 4343, JBL

JBL 4343(その6)

瀬川先生のマランツのModel 7のデザインに関しての文章は、すでに別項で引用している。
それでも、また一度引用しておこう。
     *
 なぜ、このパネルがこれほど見事に完成し、安定した感じを人に与えるのだろうか。答えは簡単だ。殆どパーフェクトに近いシンメトリーであるかにみせながら、その完璧に近いバランスを、わざとほんのちょっと崩している。厳密にいえば決して「ほんの少し」ではないのだが、そう思わせるほど、このバランスの崩しかたは絶妙で、これ以上でもこれ以下でもいけない。ギリギリに煮つめ、整えた形を、ほんのちょっとだけ崩す。これは、あらゆる芸術の奥義で、そこに無限の味わいが醸し出される。整えた形を崩した、などという意識を人に抱かせないほど、それは一見完璧に整った印象を与える。だが、もしも完全なシンメトリーであれば、味わいは極端に薄れ、永く見るに耐えられない。といって、崩しすぎたのではなおさらだ。絶妙。これしかない。マランツ♯7のパネルは、その絶妙の崩し方のひとつの良いサンプルだ。
     *
1981年にステレオサウンドから出た「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」の巻頭に書かれている。
マランツのModel 7がシンメトリーをあえて崩している点に関しては、
この瀬川先生の文章よりもはやく岩崎先生も指摘されている。

4343も、またModel 7と同じようにシンメトリーをほんのちょっと崩している、ように見ることができる。
だが4343のシンメトリーとModel 7のシンメトリー、その崩し方を完全に同じにとらえるわけにはいかない。

4343は本来必要でないメクラ板を設けてシンメトリーにした上で、
ほんの少しのアンバランスを形成しているからだ。

Date: 5月 12th, 2014
Cate: 4343, JBL

JBL 4343(その5)

世の中に左右対称のスピーカーシステムは、ゴマンとある。
左右チャンネルが左右対称のユニット配置ということではなく、
一本のスピーカーシステムで左右対称になっている、というスピーカーシステムのことで、
スピーカーユニットがインライン配置であれば、たいていは左右対称の仕上りとなる。

それらの中にあっても、4343はとびきり美しい。
見事なデザインだと、見るたびに思うだけでなく、
デザインへの関心が高くなるほどに、4343のデザインの見事さに気づく。

4343も基本的にはインライン配置のスピーカーシステムである。
では何が、他の同種のスピーカーシステムと違うのか。

それがメクラ板の存在である。

4343にメクラ板がなかったら、左右の対称性がくずれる。
とはいっても、4343は完全に左右対称ではない。
音響レンズの片方に2405があり、反対側にメクラ板がある。

メクラ板があることで左右の対称性を維持し、
ただ完全な左右対称ではなく、片方だけに2405があることで、
ほんのわずかだけ左右対称の、意図的なアンバランスさを生じさせている。

こんなふうに書いていくと、
おそらく瀬川先生がマランツのModel 7について書かれた文章を思い出される人が少なからずいる。

Date: 5月 5th, 2014
Cate: 4343, JBL

JBL 4343(その4)

ステレオサウンド 68号は1983年の秋号。
JBLから4345が登場したのは二年前の1981年だし、続けて4344も出している。
このどちらにもメクラ板はない。

JBLも、おそらくメクラ板による音質への影響があることはすでにわかっていたのだろう。
メクラ板がついているのは4343で最後になっている。
(4350の後継機4355には残っているのは4343にメクラ板があるのと同じで、デザインが理由なのかもしれない。)

メクラ板の存在は音に干渉する。
メクラ板の板厚が4343のフロントバッフルの板厚よりも薄いということも、
フロントバッフルの板厚の分だけ奥に引っ込んでいることも、
音への影響を大きくしている、といえる。

ならばメクラ板のないサブバッフルをつくってしまえば、
メクラ板がそもそもないのだから、メクラ板の影響はなくなる。

ステレオサウンド 68号の記事を読みながら、私はそんなことをすぐに考えた。
4343のサブバッフルと同じ材質で同じ板厚で、同じ塗装を施す。
違うのは2405の取り付け穴がひとつだけ、ということ。

メクラ板がなくなった4343の姿を次に思い浮べた。
そこで気づいた。

4343は左右チャンネルとしては左右対称のスピーカーではないけれど、
一本のスピーカーシステムとしてみれば左右対称である、と。

Date: 5月 5th, 2014
Cate: 4343, JBL

JBL 4343(その3)

ステレオサウンド 68号に、続々JBL4343研究が載っている。
井上先生が講師という役割で、元ユーザーの黒田先生に4343の使いこなしを伝える、というもの。

ステップIで、各ユニットの取り付けネジの増し締め。
この記事は聴感だけではなく、三菱電機の協力を得て測定も行っている。
誌面では4343のサブバッフルのモーダル解析が載っている。
ネジが緩んでいるとき、締めたときの二枚の図があり、視覚的にも増し締めの効果がわかる。

ステップIIではホーンの振動をコントロールしている。
これもダンプの有無による立ち下がり特性と振動特性の変化の図がある。

ステップIIIは、音響レンズの鳴きをコントロールするもので、
ダンプによる周波数特性の変化と振動特性の変化をグラフで示している。

ステップIVでバスレフポートと2405のメクラ板の鳴きを抑えるもの。
メクラ板の鳴きのコントロールとは、ここではブチルゴム(2cm×1cm)を、
セパレータ(ブチルゴムについている白い紙)とともに貼ることだ。

たったこれだけでどれほど音が変るのか──。
黒田先生の発言を引用しておく。
     *
これは見てるとちょっと信じられないですね。
さっき(ポートにブチルを貼ったとき)前に向って広がった感じが出てきたといいましたが、今度は、その広がった分の空気が澄んだという感じですね。さっきまでは湿度が高い感じだったのが、まるでクーラーが入ったように、すっと湿度が下がってさわやかになった。
     *
メクラ板に小さなブチルゴムを貼るだけで、それだけ音が変化するのかと訝しむ人もいるだろうし、
この記事を読んですぐさま試した人もいることだろう。

だがこの記事の最後にあるように、「相当使いこなしてきた上での話」だということ。
いいかげんな設置・調整で鳴らしている4343に同じことをしたからといって、
これだけの音の変化は得られない。

もうひとつ大事なことは、井上先生はこの記事で行ったことをそのまま4343に施せ、といわれているわけではない。
4343がもつ、いくつかの細かな問題点を指摘され、そこに手を加えることで、どういう音の変化が得られるのか。
このことを自分で試してみることで、その音の変化(方向、量)を確認することで、
それまで気がつかなかったことに気づき、使いこなしのステップを上に上がることができる、ということである。

Date: 5月 3rd, 2014
Cate: 4343, JBL

JBL 4343(その2)

JBLは1960年代にハークネスで左右対称のユニット配置を取り入れている。
にも関わらず4343では左右対称にしていない。

4343の前身4341も左右対称ではない。
4341も2405の位置を変えられるようになっているが、
位置を変えたところで左右対称配置にはならない。

4350もユニットの位置を変えられるようになっている。
2405だけではなくミッドハイを受け持つ2440+2311-2308も入れ替えることになる。

4343も4350も出荷時に左右対称配置にしてくれれば、使い手としてはありがたい。
そうしてくれてれば2405の位置を変えたければ、スピーカーそのものを左右で変えればすむ。

4343は79kg、4350は110kg。軽いとはいえない重量だが、
2405の位置を変える手間からすれば4343そのものを左右で入れ替えた方がてっとりばやい。

4343はなぜ2405の取り付け位置をユーザーにまかせてしまったのか。
その理由をあれこれ、以前は考えていた。

まず誰もが思いつくのは、そうしたほうが生産しやすいからだろう、である。

だが細かく考えていくと、ほんとうにそうなんだろうか、と思えてくる。
2405の位置を変えるための穴を余計にひとつあけなくてはならない。
さらにそこを塞ぐための板を用意して取り付ける作業がふえる。
ネジも四本余計に必要になる。

手間もコストも、わずかとはいえ余分にかかる。
そんなことをメーカーがするだろうか。
これは別の理由があるのではないか。

私が出した答は、デザインがその理由である、ということだ。

Date: 5月 3rd, 2014
Cate: 4343, JBL

JBL 4343(その1)

4343のユニット配置はインライン配置である。
ただしスーパートゥイーターの2405に関してはインライン配置にしてしまうと、
エンクロージュアの高さがその分必要になるためなのか、
ミッドハイを受け持つ2420+2307-2308の横に取り付けられている。

つまり音響レンズの横に2405はある。
そして音響レンズの、2405が取り付けられている反対側には丸い穴がメクラ板でふさがれている。

ようするに4343は出荷時には左右の指定はない。
ユニット配置は左右対称ではなく左右共通である。
だからそのままの4343を部屋に設置すると、
片チャンネルの2405は外側に、反対チャンネルの2405は内側にくる。

ウーファー、ミッドバス、ミッドハイの三つのユニットはインライン配置なので、
2405だけがこういうふうになるのは気にする人にとっては、すぐにでも変更したくなる点である。

そうなるとミッドバス、ミッドハイ、
2405の三つのユニットを取り付けているバッフルをエンクロージュアから取り外して、
2405の位置を片チャンネルのみ変えることになる。

特に難しい作業ではないけれど、面倒な作業と思う人もいるだろう。

それにしても、なぜ4343は最初から左右対称のユニット配置で出荷しなかったのだろうか。

Date: 11月 9th, 2013
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その26)

何もスピーカーはフルレンジがベストである、と強調したいわけではない。
現実としては、優秀なマルチウェイのスピーカーシステムを私もとる。
フルレンジユニットだけでは鳴らせない領域の音を優れたマルチウェイのスピーカーシステムは提示してくれる。

そして優れたフルレンジは、優れたマルチウェイのスピーカーシステムが、
いまのところどうやってもうまく鳴らせない、フルレンジならではの領域をもっている。

井上先生は、2ウェイのスピーカーシステムは二次方程式、3ウェイは三次方程式、4ウェイは四次方程式、
こんなふうにユニットの数(帯域分割)がふえてくると、解くのが難しくなってくる、
といわれた。

そのとおりだと思うし、むしろユニットの数が増えることは、
つまりはフィルターの数がふえることでもある。

2ウェイであれば、ウーファーとトゥイーターにそれぞれひとつずつで二つ。
3ウェイになるとウーファーとトゥイーターはひとつずつに、
スコーカーはハイカットとローカットのふたつのフィルター(バンドパスフィルター)が必要になり、
フィルターの数は四つになる。2ウェイの二倍になる。

4ウェイになるとウーファーとトゥイーターはひとつずつ、
ミッドバスとミッドハイはふたつずつで、合計すると六つのフィルターが必要となる。

フィルターの数だけで考えれば、
2ウェイは二次方程式、3ウェイは四次方程式、4ウェイにいたっては六次方程式といえる。
しかもフィルターで難しくなるのは、
ひとつのユニットにハイカットとローカットを使うことであり、
しかもその帯域幅が狭いほど難しさは増してくる、といえる。

Date: 11月 8th, 2013
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その25)

アルテックの405Aを、SUMOのThe Goldの前に使っていたアキュフェーズのP300Lでも鳴らしている。
そんなに聴いていたわけではない。
とりあえず、どんな感じになってくれるかな、という軽い気持で聴いていたし、
1日だけだった、と記憶している。

そのときの405Aの印象はそれほど残っていない。
10cmのフルレンジで、さほど高級なユニットでもないし、これくらいの音だな、というあなどりがあった。

そのあなどりがThe Goldで鳴らしていた時にもあった。
405Aを鳴らしていた1週間、そのあなどりがあった。

あなどりがあったからこそ、スピーカーをセレッションにSL600に変えたとき、
その変化はP300Lとの経験をもとに、このぐらいになるであろう、と想像していたし、
405Aを聴いていて感じていた良さは、SL600でも同じくらいに出るであろうし、
もしかするともっとよく出るかもしれない、と思っていた。

それが見事にくつがえされた。

405Aをあなどっていたことが、音として出たわけだ。

P300LとThe Goldという、ふたつのパワーアンプの違いは、
SL600の方がよりはっきりと出してくれる、という思い込みがあった。
けれど結果は、405Aの方がよりはっきりと出してくれた、ともいえる。

Date: 11月 8th, 2013
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その24)

トータルでの音の良さということではセレッションのSL600に素直に軍配をあげるし、
その方が所有している者としてはうれしいわけだが、
それでもなおアルテックの10cm口径のフルレンジが聴かせてくれた良さにおいては、
SL600がかなわないこと。
それもセッティングをどうつめていこうとも適わない(敵わない)ということは、癪であった。

アルテックの405Aに関しては、SUMOのThe Goldの様子見のために鳴らしていたのだから、
セッティングもいいかげんだった。床に直置きだった。
スピーカーケーブルもそのへんに適当なものを接続しただけだった。

にもかかわらずSL600をきちんとセッティングして注意を充分にはらって鳴らしているにも関わらず、
405Aが易々と出してくれる良さが、どうしても出てこない。

それがスピーカーの面白さであることはわかっていても、
だからこそさまざまなスピーカーが存在している理由のひとつでもあるわけだが、
少なくとも価格が拮抗しているのであれば納得できても、
価格も製品としてのつくりもまったく違う、ふたつのスピーカーを鳴らして、
こういう結果になるのは腹立たしい部分もないわけではない。

しかもその部分は、どんなに強力なパワーアンプをもってきたところで、うまく鳴らない。
結局のところ、フルレンジユニットが鳴らす音の良さが身にしみた。

フルレンジユニットをそのまま鳴らす。
ユニットとパワーアンプの間にはネットワークを構成する部品(コンデンサーやコイル)を介在させない。
介在するのはスピーカーケーブルと端子ぐらいにしたときの、
フルレンジの良さは、マルチウェイのスピーカーシステムを聴くことがあたりまえになりすぎている世代にとって、
どういう位置づけになるのだろうか。

Date: 2月 13th, 2013
Cate: 4343, 4350, JBL

4343と4350(その13)

こういう考え方もできるのではないだろうか。
つまり、ウーファーの口径を小さくしたからこそ、
LS3/5Aとのクロスオーバー周波数を300Hz近辺からさげることが可能になった、と。

瀬川先生の話で重要となるのは、くり返しているように聴感上のエネルギーバランスである。
ウーファーならば、20cm口径よりも30cm口径のもの、
30cm口径よりも38cm口径のもののほうが、低音域のエネルギーの再現においては有利である。

口径が小さくなければ高域の再生周波数はのびるけれど、
低音域の、聴感上のエネルギー量は減っていく、といえよう。

38cm口径のウーファーのエネルギーに対して、20cmであろうと25cmであろうと、
充分につながるには300Hzあたりまでクロスオーバー周波数をもってこなければならない。
だとしたらウーファーの口径が小さくなれば、
一般的にはスコーカー(もしくはミッドバス)とのクロスオーバー周波数を上にもってきがちになるが、
考えようによっては、スコーカー(ミッドバス)が充分に下までのびているユニットであれば、
ウーファーの口径を小さくすることでエネルギーがおさえられることによって、
300Hzあたりより低い周波数でも、聴感上のエネルギーバランスがとれる、ということだって考えられる。

仮にそうだとしたら、ロジャースがReference Systemのウーファーに33cmという、
やや中途半端な感じのする口径を採用したのは、
できるだけLS3/5Aの持味を生かした上で(できるだけ低いところまで受け持たせた上で)、
サブウーファーによって低音の再生領域をできるだけひろげようとしたことからうまれた、
絶妙な口径である──、そんなことも考えられる。

ほんとうのところはどうなのかは、やはり音を聴いてみるしかないのだが、
いままでReference Systemの実物は中古でもみたことがないし、
このReference Systemを鳴らしている人を、オーディオ雑誌上でもみかけたことがないから、
Reference Systemの、LS3/5Aとのクロスオーバー周波数が150Hzが妥当な値なのかどうかは、
これからさきも結論が出せないままになるかもしれない。

Date: 2月 13th, 2013
Cate: 4343, 4350, JBL

4343と4350(その12)

各ユニット間の音のつながりは、なにもクロスオーバー周波数だけで決定されるものではないことはいうまでもない。
同じクロスオーバー周波数でも遮断特性の違いも関係してくるし、
同じ回路構成・同じクロスオーバー周波数であっても使用部品によっても、
部品の配置によっても音は必ず影響を受けるものだから、
この値だからいい、この値から外れているからだめ、ということは言いにくいのはわかっている。

それでも瀬川先生は、「かつてマルチアンプをさんざん実験していた」ともいわれている。
私の、スピーカーユニットの経験などよりずっと多くのことを実験されてきた上で、
ウーファーに15インチぐらいの口径をもってくると、
クロスオーバー周波数は上のユニットが10cmであろうと20cmであろうと、
エネルギーとして聴感上うまくクロスオーバーするポイントが250Hzから350Hzあたりといわれているわけだ。

ロジャースのReference Systemのユニットは33cm口径と発表されている。つまり13インチ口径である。
中途半端な印象をうけるサイズを採用している。
30cmでもなければ38cmでもない。なぜ33cmという口径をロジャースはとったのか、ということと、
LS3/5Aとのクロスオーバーが150Hzということは、けっして無関係と考えにくい。

これは想像でいうことなのだが、33cmという、38cm口径よりも小口径ウーファーだからこそ、
150Hzという値に設定できたという可能性を否定できない面がある。

瀬川先生の発言で重要なのは、
15インチ口径のウーファーを使った場合、クロスオーバー周波数を250Hzから350Hzあたりにもってこないと、
聴感上のエネルギーのバランスがうまくとれない、ということである。
周波数特静的、音圧的には38cm口径ウーファーに10cm口径のスコーカーをもってきても、
問題なくつながる。

それが聴感上のエネルギーのバランスということになると、そうはいかなくなる、ということだ。

Date: 2月 13th, 2013
Cate: 4343, 4350, JBL

4343と4350(その11)

ロジャースのReference Systemの音がどうであったのか。
もっといえば、瀬川先生はどう評価されていたのか。
それを知るには、「コンポーネントステレオの世界 ’79」をくり返し読んでも答は出ない。

私がずっとステレオサウンドの読者のままであったら、
Reference Systemの音をきちんと聴くまでは、実際のところはわからない、ということになるけれど、
すくなくとも編集部にいた経験からいえば、こういう場合、音があまり芳しくないこともある。

Reference Systemもそうではないか、という気がする。
とはいっても、聴いたことがないのではっきりとしたことはいえない。
それにスピーカー、それもバイアンプ駆動で、
メインスーカーとサブウーファーが別々のエンクロージュアというシステムでは、
使い手・鳴らし手の腕次第、愛情次第で鳴り方は、大きく違ってくることもある。

これは別項の「現代スピーカー考」でも書いていることのくり返しだが、
LS3/5Aのウーファー(つまりKEFのB110)と、
KEFの3ウェイのModel 105のスコーカーは、見た目良く似ている。
Model 105のスコーカーを金属ネット越しに写っている写真をみていると、
同じKEFだから、多少はスコーカー用としてモディファイしているのかもしれないけれど、
ベースとなっているのはB110だと考えていいはず。

となるとModel 105はLS3/5Aに30cm口径のウーファーを足したモデルという見方もできる。
Model 105のウーファーとスコーカーのクロスオーバー周波数は400Hz。
JBLの4343、4350のウーファーが38cmで300hz、250Hzだったことを考えても、
Model 105の400Hzは妥当な値ともいえよう。

Date: 2月 12th, 2013
Cate: 4343, 4350, JBL

4343と4350(その10)

組合せのみっつめは、コントロールアンプを重視したもので、
アキュフェーズのC240(39万5千円)を使い、
パワーアンプはサンスイのBA2000、C240の価格の約1/3(12万円)である。
スピーカーシステムはスペンドールのBCIII、
プレーヤーはラックスのPD121、フィデリティ・リサーチのFR14を組み合わせ、
カートリッジはエラック(エレクトロアクースティック)のSTS455Eで、合計は114万円強。

組合せのよっつめは、スピーカーシステムを重視したもの。
JBLのL300(40万円)を、トリオのプリメインアンプKA9900(20万円)で鳴らす。
ここまでで予算の大半にあたる100万円をつかっているため、
プレーヤーは少しでも抑えるためにPD121の弟分にあたるPD131。
正確にはPD131のキット版であるラックスキットのPDK131にSMEの3009/S2 Improved、
カートリッジはオルトフォンMC20とヘッドアンプMCA76で、合計は119万9千9百円。

こういう組合せをつくられる瀬川先生だから、
LS3/5Aのグレードアップとしてサブウーファーを追加することにしても、
純正のReference Systemをそのままもってくることは、おもしろくないと感じられたこととおもう。

だから、あえてJBLの136Aをもってきてのサブウーファーの追加という組合せにされたと考えることはできる。
それでも、ロジャースのReference Systemの音がどうだったのか、ということを考えないわけにはいかない。

Date: 2月 12th, 2013
Cate: 4343, 4350, JBL

4343と4350(その9)

「コンポーネントステレオの世界 ’79」で瀬川先生は予算120万円の組合せを4つ、つくられている。
予算60万円の組合せからのグレードアップの120万円の組合せではなく、
最初から120万円の予算の組合せである。

この時代はCDプレーヤーはまだ登場していないから、プレーヤーといえばアナログプレーヤーのことを指す。
組合せにはプレーヤー、アンプ、スピーカーシステムが最低でも必要になり、
スピーカーシステムはステレオ再生だから2台必要。
つまりプレーヤー、アンプ、スピーカーシステム×2ということで、4台のオーディオ機器から組合せは成る。

ということは全体のバランスを重視すれば、120万円を4で割った値(30万円)の、
プレーヤー、アンプ、スピーカーシステムを選ぶ、ということになる。
瀬川先生の120万円の最初の組合せは、これに近い。

エレクトロボイスのInterface:Dに、マランツのプリメインアンプPm8、
リンのLP12にオーディオクラフトのAC3000MC、カートリッジはスタントン881Sで、
組合せの合計は約114万円。

Interface:Dは1本30万円、Om8は25万円、LP12は16万円、AC3000MCと881Sは6万5千円と6万2千円。
スピーカーシステム、アンプ、プレーヤーが30万円前後のものとなっている。

組合せのふたつめは、プレーヤーを最重視したもので、EMTの928(70万円)を使われている。
928は他のEMTのプレーヤー同様フォノイコライザーアンプを内蔵しているので、
思いきってコントロールアンプを省略してパワーアンプへのダイレクト接続。
そのパワーアンプはルボックスのA740(53万8千円)。
もうこれだけで120万円の予算をすこしこえている。

それで多少ルール違反とそしられるのを覚悟のうえで、
スピーカーシステムにヤマハのNS10Mを選び、なんとか合計金額を120万円台に収められている。
それでも予算に余裕のある方に、ということで、
スピーカーシステムをチャートウェルのLS3/5Aにすることをすすめられている。
こうなると合計金額は140万円ぎりぎりまで近づく。

Date: 2月 11th, 2013
Cate: 4343, 4350, JBL

4343と4350(その8)

ロジャースのReference Systemはステレオサウンド 48号の新製品紹介のページにはじめて登場している。
48号は1978年9月に出たステレオサウンドであり、
「コンポーネントステレオの世界 ’79」はその三ヵ月後の12月に出た別冊である。

「コンポーネントステレオの世界 ’79」の取材時にはReference Systemは登場していた。
出て間もない製品でもあった。
当然、Reference Systemについて、瀬川先生は知っておられた。
     *
現実にロジャースのLS3/5Aに関しては、すでにリファレンス・システム(¥500000)という名称で、専用のウーファーに、エレクトロニック・クロスオーバーとパワーアンプが内蔵された追加システムが、新製品として紹介されています。だから、このやりかたは、ぼくの独特の考え方ではなく、だれもが頭にひらめくことなのでしょう。
そのリファレンス・システムを、そのまま買ってくるという手もありますが、ここではひとひねりして、バラバラにパーツを買ってきて、自分で組み上げることにしました。面倒くさいといえばそのとおりでしょうが、それだけ楽しいという方もいらっしゃると思うんですね。
     *
「コンポーネントステレオの世界 ’79」の組合せには予算の制限がある。
けれどロジャースのReference Systemは50万円だから、
LS3/5Aを使った60万円の組合せを、120万円の組合わせへとグレードアップするのに予算の制約は関係ない。
なのに瀬川先生は、使われていない。

ひとつはReference Systemのトータルの音が、あまり芳しくなかったことが考えられ、
もうひとつは単に、そのまま純正のシステムを使っては、組合せの記事としての面白みに欠けるから──、
理由はこのふたつのどちらかであろう。