トランスからみるオーディオ(その4)
瀬川先生が、以前こんなことをはなされた。
MC型カートリッジはMM型カートリッジよりも(値段が)高い傾向にある。
MC型カートリッジの材料費という点での原価は、それほど高くない。
MC型カートリッジがどうしても高価になってしまうのは、手作業によってつくられるから。
MC型以外のMM型、MI型ではコイルは固定されていて動かない。
MC型はその名が示すようにコイルがカンチレバーの後方に取り付けられていて、動く。
このコイルの質量をできるだけ小さくすれば、そのカートリッジの振動系の実効質量は小さくなる。
とはいえ人が、そのコイルを巻くわけだから、小型軽量にするにも限度があるし、
あまり小型化して発電効率が低下しすぎても、別の問題が発生することになる。
MC型カートリッジを製造しているメーカーには、
熟練のコイル巻き専門の人がいた、ときいている。
たとえば専門メーカーであったスペックスは、広告で「日産21個」をうたっていた。
20個が就業時間内で、残業時間で1個ということだった。
そういう性質の製品だから、コイルを巻く人が数人いれば、
そこには、たとえ検査で合格したとはいえ、わずかなバラつきは生じる。
MC型カートリッジは同じ会社の同じ型番の、同じ時期につくられたモノを10個、
その音を比較試聴すれば、わずかとはいえ、差が生じることになる。
そういう違いは、他の要素も関係していたとしても、
おもにコイルの巻き具合だという話をきいたことがある。