Archive for category JBL

Date: 1月 9th, 2009
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その39)

アンプは何も複雑な回路構成のものでなくてもいい。
アナログディスク全盛の時には、FET1石のゼロバイアスのヘッドアンプの自作記事がよく載っていた。
私も作ったことがある。電源は006P角形9V乾電池でいい。コンデンサー、抵抗の使用も僅かだ。
配線さえ間違えなければ、調整箇所もない。

ゼロバイアス・ヘッドアンプの音が優れているかどうかはおいておくが、
こんなアンプでも、プリント基板の音の違いははっきりと出す。

アンプをつくるのが面倒な人は、ガラスエポキシ基板とベークライト基板だけを買ってきて、
親指と人さし指で基板をはさみ、指で弾いた音を聞いてほしい。

テフロン基板単体を手にしたことはないので、弾いたことはないけれど、
ガラスエポキシともベークライトとも違う音なのは確かだ。

プリント基板は、トランジスター、FET、OPアンプ、真空管などの能動素子、
コンデンサー、抵抗、半固定抵抗などの受動素子を支えるベース(基板)である。

こんなことがあったのを思い出す。
DATが登場したときのことだ。ステレオサウンドの試聴室で、各社のDATデッキ、テープの試聴が終った後、
「振ってみろ」と言いながら、井上先生が、使用テープをこちらに渡された。

親指と人さし指ではさみ数回振ってみる。無音ではない。テープ機構の音がする。
カチャカチャという音、カシャカシャという感じに近い音、ガチャガチャと濁る音……、
まったく同じ音がするものはひとつもなかった。

「いましがた聴いた音と、いまのその音、似てるだろう」とも言われた。
そのとおりなのだ。

そのテープにはデジタルで記録される。にも関わらず、アナログ的な要素が音と関係してくる。

Date: 1月 9th, 2009
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その38)

スピーカーの聴感上のSN比には、ネットワークの処理も、もちろん大きく関係してくる。
回路が同じ、コンデンサー、コイル、抵抗などの使用パーツも同じでも、
個々のパーツの配置や取りつけ方法が異れば、音は変るし、聴感上のSN比も良くなれば悪くなることもある。

私がステレオサウンドにいた頃のスピーカーは、海外製品でネットワークの構成に、
プリント基板を使っていないものは、ほとんどなかった。
一方国産スピーカーは、いわゆる598のスピーカー(スピーカー1本の価格が59800円のもの)でも、
ネットワークにプリント基板を使ったものは見たことがない。
たいていが木のベースにパーツを固定して、パーツのリード線同士をハンダ付けもしくは圧着している。

エンクロージュア内部の音圧は高い。ネットワークは振動に取り囲まれている。

プリント基板の採用は絶対悪だと言いたいわけではない。
ただ細心の注意が求められる。
ネットワークの設置場所は、エンクロージュア内のどこなのか。またプリント基板の向きはどうなのか。
こんなことでも、聴感上のSN比には影響する。
プリント基板の材質も、もちろん影響する。

スピーカーのネットワークだけでなく、アンプ、CDプレーヤーの大半に使われているのは、
ガラスエポキシ基板である。

20年ほど前に、マークレビンソンが、No.26Lのプリント基板を、
ガラスエポキシからテフロン製のものに交換したNo.26SLを出し、その音の違いが話題になった。
プリント基板が異るだけで、回路もその他の使用パーツはまったく同一なのに、
大きく音が変化したからだ。

このときテフロン基板の電気的特性の良さが注目されたが、理由はこれだけだろうか。

アンプの自作経験がある方のなかには、
プリント基板の材質によって音が違うのは経験されているだろう。
テフロン基板なんてものは入手が容易でないため比較対象に入らなかったが、
少なくともベークライト基板とガラスエポキシ基板の音を較べると、
電気的特性、信頼性ではガラスエポキシが基板が上だし、価格も高いが、
こと音に関しては、ガラスエポキシ基板がいいとは言い切れない。

Date: 1月 7th, 2009
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その37)

エンクロージュアの仕上げで、スピーカーの音は変る。

ツキ板と塗装の違いもあるし、
塗装にしても、一回だけの塗装と2回、3回と重ね塗りしたものも違うし、
一般的なウレタン塗装と、ダイヤトーンがDS10000で採用した漆黒塗装でも、大きな違いがある。

エンクロージュア表面の仕上げが音に影響することは、具体例を細かく挙げなくても周知のことだろう。

エンクロージュアの表面は、なにも表から見えているだけではなく、
エンクロージュア内部から見れば、内側もまた表面である。

外側の表面を丁寧に仕上げているスピーカーでも、エンクロージュア内部、
内側の表面を仕上げているものは、おそらくほとんど存在しないだろう。

けれど、エンクロージュア内部の音は、吸音材の違いが音となって表われるように、封じ込められるものではない。

手間もお金もかかるのはわかっている──。
聴感上のSN比をさらに高めるためには、内側の表面も仕上げたほうがいい。

Date: 1月 6th, 2009
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その36)

聴感上のSN比に関係するものとして、エンクロージュア内部の吸音材もあげられる。

ダイヤトーンのDS5000は、SN比の劣化を嫌い、グラスウールではなく100%のウールを採用している。
ビクターのZero-L10もそうだ。

グラウスウールは工業製品で、繊維の一本一本がほぼ同じ太さで同じ長さ。
つまりグラスウールが立てる音、いいかえれば雑音はある帯域に集中する。
帯域が分散してれば、それぞれのレベルも低く、それほど聴感上のSN比を劣化させないが、
なまじ均一なものをつくるのが得意な日本製だと、それが裏目に出てしまう。

4343当時のアメリカのグラスウールは、日本製ほど繊維の太さも長さもそれほど揃っていない。
工業製品としては、出来が悪いということになるのだが、このことがかえって聴感上のSN比を、
国産グラスウールほどは劣化させなかった。

グラスウールを押しつぶしたときの音を聴いてみるとわかる。
その音がエンクロージュア内で発生しているのだ。

Date: 1月 5th, 2009
Cate: 4343, JBL, 井上卓也

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その35)

ステレオサウンド 63号の記事で井上先生がやられていることは、
4343の聴感上のSN比を高めることである。

そのために音響レンズ2308のフィンの間に消しゴムを小さく刻んだものをはめていく、
2405の取付け穴のメクラ板の鳴きを抑えるためにブチルゴムを、ほんのすこし貼る、などである。

大事なのは、雑共振を適度に抑えられていること。

たとえばメクラ板全面にベタッとたっぷりのブチルゴムを貼れば、ほとんど鳴きを抑えることは出来るが、
音が必ずしも良くなるものではないことは、言うまでもないことだろう。

しかも重要なのは、井上先生がやられていることは、気に喰わなければすぐに原状復帰できる点である。

だからハンダ付けを必要とするパーツの交換については、いっさい語られていない。

ネットワークのコンデンサーを、違う銘柄のモノに交換する場合、
まず既存のパーツを取り外すためにハンダゴテを当てる。
当然熱が加わる。取り外すパーツにも、それ以外のパーツにも、である。
この熱が、少なからずパーツに影響をあたえる。しかもその影響を取り除くことはできない。

井上先生が言われていたのは、アンプでもスピーカーでもいい、
パーツに熱を加えたら、それだけ音は変化(劣化)する。決して元には戻せない、ということだ。

交換したコンデンサーをまた外して元のコンデンサーを取りつけても、
以前のまったく同じ音にはならないことは肝に銘じておきたい。

このことは修理にも言える。
音をよく理解しているメーカーは、アンプの修理の場合、片チャンネルのあるパーツを交換した際、
異常がなくても、反対チャンネルの同じパーツを交換する。
片チャンネルだけのパーツの交換では、熱による影響によって、微妙とはいえ、
左右チャンネルの音に無視できない音の差が生じるためである。

ブチルゴムは、貼った音が気に喰わなければ剥がせばいい。
全面的に気にいらなくても、すこしでもいい点を感じとることが出来たら、
ブチルゴムの大きさや貼り方を工夫してみる。
さらにはメクラ板を、いろんな材質で、厚みを変えて作ってみるという手もある。

そうやって経験を、ひとつひとつ積み重ねていくことは、いずれ宝となる。

Date: 1月 4th, 2009
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その34)

ステレオサウンドの63号の記事で、井上先生が、4343の鳴らし込みをやられている。
そこでもバスレフポートに、すこし手を加えられている。

バスレフポートに手を突っ込んで、ポートの縁(もちろん外側)に、
ブチルゴムか布製の粘着テープを少量貼り、鳴きをコントロールするというもの。

たったこれだけのことなのに、確実に音は変化する。
貼った音か、オリジナルそのままの音を採るかは、その人次第だが、
一度は試してみてほしい。そして、バスレフポートに、わずかに手を加えただけで、
どういうところが変化するのを経験しておくのは、決して無駄にはならない。

バスレフポートの問題点は、他にもある。固定方法だ。
ほぼすべてのバスレフ型スピーカーは、フロントバッフル(もしくはリアバッフル)側だけで固定している。
つまりバスレフポートは片側がフリーの、片持ち状態である。
長いポートであるほど、片持ちは避けたい。

さらにポートは通常切りっぱなしで、両端の縁は直角になっている。
ここにアール(丸み)をつければ、もちろん音は変化する。
カーヴを大きくすれば、さらに変わる。

材質も金属が、つねに最良というわけではない。
すこし柔らかい材質の方がいい結果が得られることもあるし、
金属でも、ダンプするかしないか、
ウィルソン・ベネッシュのディスカヴァリーのように、
チーンという金属の鳴きを積極的に活かしているスピーカーもある。

バスレフポートの長さや径を変化させなくても、バスレフポートをどう処理するかで、
おもしろいくらいに遊べるのである。

Date: 1月 3rd, 2009
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その33)

DS5000について書くために記憶を辿っているうちに、ひとつ思い出したことがある。
おそらくDS5000が、バイワイヤリング対応の最初のスピーカーではないか、ということだ。

入力端子は2組あり、下がウーファー専用の端子、上がミッドバス、ミッドハイ、トゥイーター用の端子で、
上下の端子は金メッキが施された無酸素銅のバーで結ばれていた。

バイワイヤリング方式は、イギリスから始まったように言われているようだが、
少なくとも1982年にDS5000はバイワイヤリング方式を採用していた。

ただし当時は、バイワイヤリングという言葉がまだ使われていなかった。

Date: 1月 3rd, 2009
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その32)

DS503のネットワークには、いっさいハンダが使われていない。
コイルやコンデンサーなどのパーツは、すべてスリーブによる圧着で接いでいる。

ハンダによる抵抗分のロス、異種金属同士によるダイオード効果が及ぼす
ローレベルへの悪影響を嫌って、の圧着の全面採用である。

アルミ製のバスレフポート、圧着によるネットワーク、
これらがどのくらいローレベルのクォリティを向上させているか──、
ステレオサウンドにいたとはいえ、試作品を聴くことは稀である。

けれどDS503に関しては、紙ポートとハンダ付けネットワークの音を聴いている。

1982年にステレオサウンド別冊として出たサウンドコニサー(Sound Connoisseur)で、
DS503を取りあげている。

紙ダクトのDS503の音は、ずいぶん違っていた。
完成品のDS503(アルミポート)では、耳をそれほど聳てなくても聴き取れる音が、
あきらかにかすれて、かなりここでこの音が鳴るとわかって集中するからなんとか聴き取れる、
そんな感じになってしまう。あきらかにマスキングされている音になる。

バスレフポートの材質が変るだけで、これだけの変化である。

Date: 1月 3rd, 2009
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その31)

アンプの性能を表すSN比が、聴感上という枕詞がつくようになったとはいえ、
スピーカーについても語られるようになったのは、
ダイヤトーンの3ウェイ・ブックシェルフ型DS1000からだったと、私は思っている。

とはいえそれ以前から高SN比の試みは少しずつではあるが、為されていた。
ダイヤトーンのスピーカーでいえば、
DS505とDS5000の間に登場した3ウェイ・ブックシェルフ型のDS503である。

DS503は、DS505同様、ウーファーにはアラミドハニカム振動板、
スコーカーとトゥイーターはボロン採用のDUD構造のドーム型を採用。
DS505が密閉型に対し、DS503はバスレフ型となっている。

ペアで25万円の普及クラスのスピーカーであるが、たとえばバスレフポートは、
通常のスピーカーが紙ポートを使用しているのに──4343ですら紙ポートである──、
DS503のダクトは、3mm厚のアルミ引抜きパイプである。

ダイヤトーンによると、紙ポートだと約400Hz付近に一次共振が表われる。
DS503は3ウェイなので、ウーファーのクロスオーバー周波数は500Hz。
ウーファーの受持ち帯域内で、バスレフポートの一次共振が起こることになる。
アルミポートの一次共振は1500Hzと、3オクターブほど高くなっている。

さらにポート内は塗装仕上げとなっている。
気がつき難い、こんなところまで仕上げているのは、やはりローレベルのクォリティを向上させるため、
聴感上のSN比を向上させるためである。

バスレフポートを通って出てくる空気は、ポート内の表面がざらついていると風切り音を発生させる。
DS503の塗装は、それを抑えるためである。

ヤマハが1988年に発表した、負性インピーダンス駆動とバスレフ型エンクロージュアを
組み合せたYST方式(発表当時はAST方式と呼んでいた)のバスレフポート内には、
風切り音を抑えるためにフェルトが貼られていた。
しかもただフェルトを使うだけでなく、柔軟剤でさらに柔らかくすることで、
徹底して風切り音を抑えるよう工夫されていた。

余談だが、柔軟剤も市販されているものすべて集めて試したと聞いている。

Date: 1月 3rd, 2009
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その30)

テクニクスのSB-E500を除いて、国産の4ウェイ・スピーカーは、
すべてコーン型とドーム型もしくはリボン型などのダイレクトラジエーターのユニットを採用しているだけでなく、
平面振動板、ハニカム素材やボロン、セラミック系など、高剛性で内部音速の速い素材を積極的にとり入れている。

もちろん4343もピストニックモーションの良好な帯域で、それぞれのユニットを使うために、
帯域を4分割しているのだろうが、JBLの場合、ピストニックモーションの積極的な追求よりも、
むしろ全帯域にわたってエネルギーレスポンスの充実・フラット化と
水平方向の指向性のワイドレンジ化を優先しているように思える。

同じ4ウェイという形態でも、優先的に追求している点は異っている。

もう1点違うのは、聴感上のSN比向上がある。
ダイヤトーンのDS5000がそうだし、ビクターのZero-L10では、さらにはっきりしている。

Date: 1月 2nd, 2009
Cate: 4345, JBL, 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(その22)

瀬川先生が愛用されていたJBLの4341を譲り受けられたMさん曰く
「新品のスピーカーだと、最初の音出しをスタート点として、多少良くなったり悪くなったりするけど、
全体的に見れば手間暇かけて愛情込めて鳴らしていけば、音がよくなってくる。
けれど瀬川先生の4341は、譲り受けて鳴らした最初の日の音がいちばん良くて、
徐々に音が悪くなる、というか、ふつうの音に鳴っていく」。

そんなバカなことがあるものか、気のせいだろうと思われる方もいて不思議ではない。

でも、瀬川先生の遺品となったJBLの4345も、そうなのだ。
瀬川先生が亡くなられて1年弱経ったころ、サンスイのNさんが編集部に来られたときに話された。
「瀬川さんの4345を引き取られたIさん(女性)から、すこし前に連絡があってね。
ある日、4345の音が急に悪くなった、と言うんだ。故障とかじゃなくて、
どこも悪くないようなんだけど、いままで鳴っていた音が、もう出なくなったらしい」。

これも、やはり瀬川先生が亡くなられて半年後のことだったらしい。

半年で、瀬川先生が愛用されていたスピーカーに込められていた神通力、
それがなくなったかのように、どちらもふつうの4341、4345に戻ってしまったようだ。

西新宿にあったサンスイのショールームで行なわれていた瀬川先生の試聴会、
それもJBLの4350を鳴らされたときに行った人の話を聞いたことがある。
「がさつなJBLのスピーカーが、瀬川さんが鳴らすと、なんともセンシティヴに鳴るんだよね」。

「音は人なり」と言われはじめて、ずいぶん、長い月日が経っている。
けれど、何がどう作用しているのかは、誰もほんとうのところはよくわからない。

真に愛して鳴らしたモノには、少なくとも何かが宿っているのかもしれない。

Date: 1月 2nd, 2009
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その29)

ビクターZero-L10の専用置き台ST-L10は、ダイヤトーンのDK5000とは違い、調整代(しろ)がない。
2本の角材をX字型の桟で連結した構造で、寸法もZero-L10にぴったりくるようになっている。

ST-L10上で、Zero-L10を多少前後させることで、調整できないことはないけれど、
見た目を考えると、面を揃えたほうがしっくりくる。
もちろん置き台とスピーカーとの間に、スペーサーを挿むこともできるが、
メーカーの主張としては、置き台とスピーカー底面の接触面積を決めておくことで、
音を仕上げているわけで、まずは何も挿むことなく取り組むべきだろう。

Zero-L10は、Zero1000の3ウェイ・プラス・スーパートゥイーター的構成ではなく、
DS5000同様、中低域の再現能力を高めるための本格的な4ウェイである。

ウーファーとミッドバスは、セラミック・ファイバーとクロスカーボンの複合素材を、
ミッドハイとトゥイーターは、ピュアファインセラミックを振動板に採用している。
振動板を剛性を高め、内部音速の速い素材を使うことで、
分割振動をできるだけ上の帯域に移動させ、ピストニックモーション領域の拡大を図っている。

ピストニックモーションの追求こそ、4343と国産4ウェイ・スピーカーとの、
もっとも大きな違いだと、私は考えている。

Date: 1月 2nd, 2009
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その28)

ダイヤトーンが、アコースティックキューブと呼んでいたDK5000は、
カナダ産カエデを使い、ブロックを12分割したランバーコア構成にしたもので、
先に述べたように上部センターに無酸素銅のピンが打ち込まれている。
アクセサリーとして直径25mm、厚み1.6mmの無酸素銅のスペーサーが8枚ついている。

通常の銅よりも無酸素銅は振動の減衰が早い。
同じ直径、厚みのものを弾くと、チーンという音の鳴りの時間が無酸素銅は短いことからもわかる。

このスペーサーを利用することで、スピーカー底面への接触面積は減り、より自由な鳴り方になるとともに、
当然、この銅スペーサーの音も、わずかとはいえ、音にのる。

DK5000の後には、ヤマハからスペーサー・セットが発売された。
無酸素銅のスペーサーの他に、セーム革やフェルトなど、素材の異る円状のスペーサーの詰め合わせだった。

DS5000(DK5000)が登場した1982年ごろから、
置き台、スタンドに、専用のモノがぼつぼつ出てくるようになった。

セレッションのSL6も、木製の専用スタンドが用意されていたし、
SL600ではクリフストーンスタンドと呼ばれる鉄製で、パイプの中に石が詰め込まれたものになっている。
ダイヤトーンからも自社製ブックシェルフ・スピーカー用に、DK5、DK10などが用意されていた。
ビクターやヤマハからも、木製のスタンドが登場している。

それまでのキャスター付きの、間に合わせ的なつくりのモノから、
しっかりとしたつくりで、組み合せるスピーカーとのことを配慮しはじめたモノへと変化していっている。

そして国産4ウェイ・スピーカーで、1985年と遅くに登場したビクターのZero-L10には、
専用の置き台ST-L10が用意されていた。

Date: 1月 2nd, 2009
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その27)

DK5000は、何もDS5000専用というわけではない。
ステレオサウンドの試聴室では、リファレンス・スピーカーとして使ってきたJBLの4344は、
常時DK5000の4点支持だった。

床にベタ置きとDK5000を使ったときで何か異るのか。
まずスピーカーの底板の鳴りが大きく変化する。
ベタ置きでは、底板を床でダンプするようなもので、
底板の鳴りが減った分、主に天板、その他の部分の鳴りが大きくなる。
このことはスーパートゥイーターのところで触れている。

DK5000や角材でスピーカーを浮かすと、底板の鳴りは、いくぶんフリーになる。
さらに4点支持でも、DK5000をどの程度、スピーカーの底板にかませるかによって、
底板の鳴りをコントロールできる。

ためしにDK5000がスピーカーからはみ出ないように、四隅をきちんと揃えた音と、
DK5000のセンターピンが、スピーカーの四隅ぎりぎりになるまで外側にはみ出させた音、
まずはこのふたつの状態の音を聴いてみてほしい。

低音の鳴り方、締まり具合の変化が大きいはずだ。

DK5000を四隅に揃えた状態とは半分かかった状態では、底板がフリーになっている面積が違う。
当然底板の鳴り方が変化し、エンクロージュア全体の鳴り方も変化している。

一般的にスピーカーユニットは前面に取りつけてあるため、スピーカーの重心は前面寄りにある。

だから、さらなる調整として、前側2つのDK5000と後ろ側2つのDK5000のかませ具合を変えてみる。
前側は四隅からはみ出ないようにして、後ろ側は半分だけかませてみる。
このへんは自由に試してみてほしい。

DK5000にかかる荷重が変化するということは、おそらく床の振動モードも変化しているはずである。

スピーカーの設置場所は、壁からの距離だけの関係だけでなく、床との相関関係も大きい。

Date: 1月 2nd, 2009
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その26)

4343とDS5000のいちばんの大きな違いは、ともにエンクロージュア底面も仕上げされたフロアー型だが、
DS5000には、DK5000という専用のベース(脚)が用意されていることだ。

フロアー型スピーカーだから床に直接設置して、それでいい音が得られるわけではない。
台輪(ハカマ)付きであっても、多少持ちあげて鳴らしたほうが好結果のことが多い。

床からの反射ということだけでなく、スピーカーと床との相関関係は、
スピーカーの重量が重く、エンクロージュア底部の面積が広いモノほど、密接なものとなる。
この関係をどう捉え、どうコントロールするかが、スピーカー設置、
特にフロアー型スピーカーの使いこなしの最大のポイントといえよう。

DK5000は一辺9cmの、良質の木の立方体のブロックで、上面センターに金属のピンが打ち込まれている。
8個1組のDK5000で、DS5000を4点支持、もしくは3点支持で持ちあげる。
アンプやCDプレーヤーもふくめて、3点支持だと音の輪郭がくっきりする傾向がある。
4点支持では、安定した、しなやかな音になる。

スピーカーの場合、床が完全にフラットのことは稀なため、
3点支持の方がガタツキなくセットしやすい。
4点支持だと、ガタつかないまでも、4つすべてのDK5000の上に、均等に荷重がかからないことが多々あり、
ひとつだけ手で容易に動かせてしまうものが出てきたりする。

そのままにしておくと、4点支持の良さは活きてこない。
なんらかのスペーサーを、床とDK5000の間に挿し込み調整する必要がある。
当然、スペーサーの素材によっても音は違ってくる。
私の経験では、和紙の使用がいい結果をもたらしてくれることが多かった。

最近では「レベラー」というコンクリートがある。
通常のコンクリートよりも、水のようにさらさらしたもので、
水は自然に水平が出るように、このレベラーも、流し込むだけいい。
ただし通常のコンクリートよりもかなり高価だけど。