Archive for category バッハ

Date: 2月 28th, 2015
Cate: バッハ, マタイ受難曲

カラヤンのマタイ受難曲(その1)

カラヤン指揮によるバッハのマタイ受難曲は、
ふたつのCDが現在では入手可能である。

ひとつはドイツ・グラモフォンによる1972-73年にかけてのステレオ録音。
もうひとつは1950年のモノーラルのライヴ録音である。

1950年録音は、カスリーン・フェリアーが歌っているので、
アナログディスクでももっていた(ただし音はひどかった)。
CDになってからも購入した(まだこちらの方が音はまともになっていた)。

でもドイツ・グラモフォン盤は持っていないどころか、聴いたことがない。
聴こうと思ったことがなかった。

1970年代のカラヤンに対する、こちらが抱く勝手なイメージとマタイ受難曲との印象が異質な感じがして、
なんとなく聴く気がおきなかっただけが理由である。

けれどクラシック音楽における精神性と官能性、精神的なものと官能的なものは、
実のところ一体であって、不可分のものであることに気づけば、
カラヤンのマタイ受難曲(ドイツ・グラモフォン盤)に対しての興味がわいてくる。

このことは昔から気づいていたのかもしれない。
レクィエム(モーツァルトでもフォーレでもいい)において、
ある種の官能性が稀薄なものに関しては、名演といわれるものであってもさほどいい演奏とは感じてなかったからだ。

Date: 6月 20th, 2013
Cate: バッハ, マタイ受難曲, 五味康祐

ヨッフムのマタイ受難曲(タワーレコードに望むこと)

今回のヨッフムのマタイ受難曲もそうだが、
タワーレコードはオリジナル企画として、独自にCD復刻を行っている。
こういう企画はありがたい。

私がタワーレコードの、この企画に望むのは、
五味康祐・愛聴盤シリーズである。

ヨッフムのマタイ受難曲は今回復刻された。
次は、ミヨーの「子と母のためのカンタータ」を復刻してほしい。
ミヨー夫人が朗読をつとめたものだ。
いまナクソスのサイトでMP3では聴けるようになっているものの、
やはりCD、もしくは16ビット・44.1kHzのダウンロードで聴きたい気持がつよい。

それからアンドレ・メサジェの「二羽の鳩」。
これのLPは「子と母のためのカンタータ」とほぼ同時期に手に入れたもの、
ある事情で手もとにはない。
しかも演奏者が誰だったのかを、はっきりとおぼえていない。

まだある。ヴィヴァルディのヴィオラ・ダモーレ。
五味先生の著書を読んでも演奏者が誰なのかはっきりしないが、
どうもアッカルドによるものらしい。

まだまだあるけれど、この三枚、
無理ならばミヨーだけでも復刻してもらいたい。

Date: 6月 17th, 2013
Cate: バッハ, マタイ受難曲

ヨッフムのマタイ受難曲(その1)

マタイ受難曲を聴くのであれば、最初はヨッフムの演奏で聴きたい──。
五味先生の文章にふれてきた者にとって、
そして五味先生の文章によって導かれるようにクラシックを聴いていった私にとって、
バッハのマタイ受難曲は、五味先生の愛聴盤であったヨッフム盤で聴きたい。
それも国内プレスのLPではなく、輸入盤で聴きたい──、
五味先生の文章によってマタイ受難曲を知った時から、そう思っていた。

マタイ受難曲のヨッフムの、それも輸入盤は私が高校生の時まで住んでいた田舎では手に入らなかった。
国内盤も見た記憶がない(輸入盤ばかり探していたせいもあろうが)。

マタイ受難曲を10代の若造がぱっときいて、すべてを理解できるなんて思っていなかったし、
だからこそ、できるだけ、その時の自分にできる範囲であっても、
少しでもいい環境でマタイ受難曲を聴きたかった。
それが初めて耳にすることになるマタイ受難曲になるのだから。

ヨッフムのマタイ受難曲は、だから輸入LPで買った。
初めて聴いたマタイ受難曲となった。

その後だった、クレンペラー、リヒターの新旧録音を聴いたのは。

ヨッフムのマタイ受難曲は、割と早い時期にCDになった。
さっそく買った。もちろん輸入盤だった。

マタイ受難曲を聴いた時から30年以上が経ち、
いくつものマタイ受難曲を聴いてきた。
ヨッフム盤がベストなのかどうかは、どうでもいいことであって、
誰の、どの演奏がベストか、などと考えたことはない。

それでもいくつものマタイ受難曲を聴いた後にヨッフム盤に耳を傾けると、
素直に美しい、とおもえる。

私にとってヨッフムのマタイ受難曲は愛聴盤となった。
けれど、いつのまにかCDは廃盤になっていたようで、
一時期はハイライト盤のみだったりもした。
いまも輸入盤は廃盤のようであるし、国内盤も廃盤である。

そのヨッフムのマタイ受難曲をタワーレコードが、今回復刻してくれた。
タワーレコードのサイトによれば、国内盤は1997年以来の再発、ということだ。
オリジナルマスターからのハイビット・ハイサンプリング音源をCDのマスターとして使用しているらしい。

でも、そういうことは、この演奏の前には些細なことのようにおもえてしまう。
とにかく、やっとヨッフムのマタイ受難曲を誰かにすすめられるようになったのが、うれしい。
このうれしさは、どこか格別である。