あったもの、なくなったもの(その12)
(その11)は六年前。
そんな前のことの続きを書こうという気になったのは、
ステレオサウンド 210号の告知を見たからだ。
210号の発売日は二日後だから、内容ではなく、
記事のタイトルのつけ方を見ただけにすぎないのだが、
第二特集の「達人が明かすHi-Res再生の実践テクニック」、
このタイトルを見て、「あったもの、なくなったもの」を、いままで以上に実感した。
3月5日の発売日に210号を読んでみれば、
もしかすると、タイトル通りの内容の記事だな、と思うかもしれない(まぁ、ないと断言できるが)。
そうだとしても、このタイトルの薄っぺらさ。
薄ら寒い影のようなものを感じた。
これは、ずっと以前のステレオサウンドにはなかったものである。
なかったものが、いまはある。
それは以前のステレオサウンドにあったものがなくなったからなのだろう。
これまでは、ステレオサウンドがよくなってくれるかもしれないというわずかな期待をもっていた。
もっていたからこそ、厳しいことを書いてきた。
けれど、いよいよまったく期待できなくなってしまうような気がしている。
だから、薄ら寒い影のようなものを感じたのかもしれない。