グレン・グールド著作集(その1)
今年は2012年、グレン・グールド没後30年だから、ふたたび読みはじめたわけでもないけれど、
今日、ひさしぶりに(ほんとうにひさしぶりに)にグレン・グールド著作集を本棚からとり出した。
グレン・グールド著作集の翻訳本がみすず書房から出たのは1990年、I集、II集ともすぐに買って読んだ。
二冊あわせたボリュウムはけっこうなもので、一度読んだだけだった。
なので、二冊の著作集に書かれてあることがどの程度しっかり頭にはいっているかというと、いささか心もとない。
いつかは、じっくり読もう、と思いながら、
グールドの書いたものを読むのはけっこうなエネルギーを必要とするから、ついついそのままにしていた。
それが、今日、ふと目に留まり手を伸ばした。
すくなくとも一度は読んだ本だから、気になるところだけを読むということもできるわけだが、
22年ぶりの二度目だから、ほとんどはじめて読むに近いといえるところもあるから、
これはもう最初から読み進めていくしかない。
ティム・ペイジによるまえきががあり、
グールドによる文章(内容)は、
プロローグ
第一部 音楽
第二部 パフォーマンス
間奏曲
第三部 メディア
第四部 そのほかのこと
コーダ
からなっていて、プロローグは、1964年11月にトロント大学王立音楽院の卒業生への祝辞である。
1964年だから、1932年生れのグールドは32歳。
ここで話している内容は──グールドが残した録音で我々は彼がどれだけすごい人かを知っているわけだが──
やはり驚く。
いくつか引用しておきたい。
*
諸君がすでに学ばれたことやこれから学ばれることのあらゆる要素は、ネガティヴの存在、ありはしないもの、ありはしないように見えるものと関わり合っているから存在可能なのであり、諸君はそのことをもっと意識しつづけなければならないのです。人間についてもっとも感動的なこと、おそらくそれだけが人間の愚かさや野蛮さを免罪するものなのですが、それは存在しないものという概念を発明したことです。
*
プロローグから、いきなり考え込まされる……。