真空管アンプの存在(その78)
リークもQUADも、
コントロールアンプも交流点火としているのは、パワーアンプの入力感度の高さが関係しているようにも思う。
真空管アンプの時代もそうだったし、
トランジスターアンプが主流になってもしばらくはイギリスのパワーアンプの入力感度は全般的に高かった。
アメリカのパワーアンプが入力1Vで最大出力が得られるのに、
イギリスのパワーアンプは50mV、100mVという値だった。10倍から20倍、感度が高い。
つまりアメリカのアンプでコントロールアンプでゲインを稼ぎ、
イギリスのアンプはパワーアンプでゲインを稼いでいた、ゲイン配分といえる。
ただ、なぜイギリスはこういうゲイン配分としたのか、その理由は正直よくわからない。
もしかするとBBCの規格がそうだったのかもしれない、とは思うのが確証はない。
リーク、QUADが交流点火だったのは、
スピーカーシステムの能率が低いせいではないか、と思われる人もいるかもしれない。
たしかにQUADのESLは低い。
けれどリークやQUADと同時代にはタンノイ、ヴァイタヴォックスの大型システムが存在していた。
これらのスピーカーシステムと組み合わせられることもイギリスでは多かったはず。
事実、五味先生がタンノイにオートグラフを発注された時、
タンノイに「いかなるパーツを使用すべきや」と問合せされたとき、
タンノイからの回答は、カートリッジはデッカ、トーンアームはSME、アンプはQUADであった、と
「オーディオ巡礼」(ステレオサウンド刊)所収の「わがタンノイ・オートグラフ」に書かれている。
オートグラフの能率であっても、QUADの22のS/N比で特に問題はない、ということだろう。
となると、イギリスのメーカーが交流点火でも実用的なS/N比を確保できていたのは、
アメリカ勢(マッキントッシュ、マランツ)に使われていた真空管の製造メーカー、
イギリス勢(リーク、QUAD)に使われていた真空管の製造メーカーの違いが、
理由としてはいちばん大きいのではなかろうか。
アメリカ勢とイギリス勢では、直流点火と交流点火という違いがあり、
アメリカ勢のマッキントッシュとマランツはどちらも直流点火ではあるものの、
まったく同じとはいえない違いがある。