井上卓也氏のこと(その23)
井上先生は、カートリッジに関して、独自の主張をお持ちだった。
そのレコードのレーベルの所在地に、なるべく近いところで作られているカートリッジを選ぶ、
さらに録音が行なわれた現場に近いカートリッジも選ぶというものだ。
となるとクラシックをよく聴く人であれば、ドイツ、イギリス、オーストリア製のカートリッジは、
最低でもひとつずつは持っておきたい。
EMT、デッカもしくはゴールドリング、AKGといったブランドが、すぐに浮かぶ。
ジャズやポップスとなると、アメリカの録音がぐんと増えるので、
イギリス製のカートリッジに、アメリカ製のモノもいくつか加えたくなるだろう。
ピカリング、スタントン、シュアー、エンパイア、グラドなど、候補はいくつもある。
それでも不思議なことに西海岸に、カートリッジのメーカーは存在しない。
スピーカー・メーカーは、JBLをはじめ、いくつか存在するのに、
カートリッジ・メーカーとなると、アナログディスク全盛時代でも存在していたのだろうか。
JBLの4343を思わせるMC型カートリッジが存在していれば……、などと、
つい妄想アクセラレーターを全開にしてしまっている。
それにしても井上先生は、なぜ、このような主張を持たれるようになられたのだろうか。
きっかけとなる出来事があったのだろうか。