40万の法則が導くスピーカーの在り方(その1)
40万の法則が、ある。
といって、も若い世代の方には、なんのことかわからない方のほうが多いのではないだろうか。
私と同じ世代でも知らない方がいても不思議はない。
私はラジオ技術に、当時(1977年ごろ)連載されていた池田圭氏の「盤塵集」を読んでいたから、
オーディオに関心をもって、わりとすぐに40万の法則について知っていた。
人間の可聴範囲は20Hzから20000Hzとされている。
下限の20Hzと上限の20000Hzをかけ合せると400000(40万)になるところから、きている。
つまり理想的にはオーディオのシステム全体の周波数特性は20Hzから20000Hzまで平坦であること。
だだ実際に、とくにこの40万の法則についてあれこれ語られていた時代は、
低域も高域に関しても、そこまで帯域を延ばすことは困難なことだった。
となると音のバランスについて論じられるようになってくる。
そのあたりから40万の法則は生れてきたようで、「盤塵集」によれば、
40万の法則を最初に主張したのはBBCのニクソンという人、とのことだ。
40万の法則に則れば、低域の再生限界が仮に50Hzだとすれば、これで音のバランスがとれる高域の範囲は、
400000÷50=8000(Hz)、つまり50Hzから8kHzということになる。
低域が40Hzになると高域は10kHz、30Hzで13.33kHz、25Hzで16kHz。
こうやってみていくと高域のレンジが狭いと感じられるだろう。
それで40万の法則ではなく、50万の法則、60万の法則、というのも出てきた。
たしかに40万の法則では、いまの感覚では高域の値が低すぎると感じるけれど、
40万の法則が音のバランスついて論じられたところから生れてきたことを思い出せば、
必ずしも低い値とはいえないともいえる。