Date: 5月 10th, 2011
Cate: 録音
Tags:

50年(その5)

まだまだ調整中の段階とはいえ、いい手ごたえを感じていたわけだから、
彼は、さっそくプレトニョフのCDをかけたそうだ。

彼のところをたずねた人の中には、録音の仕事をしている人がいた、ときいている。
ほかの人もふくめ、オーディオのキャリアはみな長く、オーディオ機器につぎこんだ金額も相当なもの。

でも、彼らにはプレトニョフのCDは、ピンとこなかったらしい。
たしかにいい録音だけど、なぜ彼がそんなに、プレトニョフのCDをあつく語るのかが理解できなかったようだ。

その中のひとり、録音の仕事をやっている人が、持参したCDの中から、
彼が優秀だと思っているピアノのCDをとりだした。それを鳴らす。
プレトニョフのCDが出るまでは、優秀録音と呼ばれたであろうが、
プレトニョフの録音が捉えている、無形のピアノを再現するのに必要な情報を、
その録音が十分にとらえているかというと、けっしてそうではない。

その録音は、私も聴いたことがある。
プレトニョフのCD以前と以後では、そして菅野先生のリスニングルームでの「再現」を聴いたあとの耳では、
こんどは、彼も私も、録音の仕事をしている人が感じているほどに、いい録音とは思えない。

ピアノの音色、ダイナミックレンジの広さなどなど、そういう従来の録音の評価軸にそうならば、
たしかに優秀録音だし、録音の仕事をしている人のいうことも理解できる。
けれど、その録音では、プレトニョフの録音が可能にした、無形のピアノを鳴らしてくれるとは感じられないのだ。

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