Date: 11月 15th, 2021
Cate: 孤独、孤高
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ただ、なんとなく……けれど(その4)

EMIのクラシック部門のプロデュサーだったスミ・ラジ・グラップの、
「人は孤独なものである。一人で生まれ、一人で死んでいく。
その孤独な人間にむかって、僕がここにいる、というもの。それが音楽である。」
──もう何度も引用している。

引用するたびに思っていることは、
ここでの音楽とは、
孤独な人にむかって「僕がここにいる」といってくる音楽とは、
レコード(録音物)を再生しての音楽を指しているように感じることだ。

スミ・ラジ・グラップがレコード会社のプロデューサーだったから、
そう思うわけではない。

少し考えてみればわかることだ。
孤独に陥っている人が、コンサート会場に音楽を聴きに行くだろうか。
行く人もいよう。
それでも、ほんとうに孤独を強く感じている、まさにその時に、
都合よくコンサートが行われているなんて、稀なことだ。

それに聴きたい音楽、心が必要としている音楽が、
そのコンサートで演奏されるか──、これはもっと可能性が低くなる。

それでもゼロではないだろうが、
そこでの演奏が素晴らしいかどうかの保証もない。

「人は孤独なものである。一人で生まれ、一人で死んでいく。
その孤独な人間にむかって、僕がここにいる、というもの。それが音楽である。」
それはオーディオを介して聴く音楽である。

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