「ルードウィヒ・B」(ジャズ喫茶の描写・その2)
二ヵ月ほど前、ある繁華街にいた。
私の前を、あるカップルが歩いていた。
20代なかばごろのように見えた二人だった。
男のほうが、あるビルを指さして、
「ここ、けっこう有名なジャズ喫茶なんだ」と相手の女性に話しかけた。
「じゃ、話せないんだ」と女性。
それでジャズ喫茶に関する会話は終っていた。
男性は、そのジャズ喫茶に彼女と二人、入ってみたかったのかもしれない。
そんな感じにみえた。
けれど、女性の一言で、あっさり却下された。
ジャズ喫茶では黙って、音楽(ジャズ)を聴いていなければならない、
そういう認識が一般的なのだろうか。
そうだから「じゃ、話せないんだ」で、ジャズ喫茶に関する会話は終ったわけだ。
この若い二人のジャズ喫茶への認識は、どこからの影響なのだろうか。
何によってつくられたものなのだろうか。
そういうジャズ喫茶があるのは事実だが、
そうではないジャズ喫茶も、東京にはある。