2020年をふりかえって(その6)
iPod、iPhoneを、きちんとしたオーディオシステムに接ぐことに、
特に抵抗感はなかった。
この一年、iPhoneで音楽を聴く時間が多くなって、そのことを再確認したともいえる。
とはいえ、iPhoneで聴くこと、
もっといえばパッケージメディア以外で音楽を聴くことに抵抗感、
そこまでいかなくとも躊躇している人もいるはずだ。
儀式を重視する人は、特にそうであろう。
おもむろにジャケットからLPを取り出して、
ヒゲをつけないように慎重にターンテープルの上におく。
盤面をクリーニングして、慎重にカートリッジを降ろす。
そしてボリュウムをあげてゆく──。
こういう一連の行動があってこそ、音楽を聴くという気構えが持てる人もいる。
それにいい音と利便性は両立しない、と主張する人もいる。
それ以外の理由で、パッケージメディアに拘る人はいるだろう。
でも、そういう人でも、今年はコロナ禍でオーディオショウのほとんどが中止になった。
そのかわりというわけではないが、
YouTubeでプレゼンテーションを行うところが、かなり出てきた。
オーディオ協会もそうだし、オーディオ店もやっている。
これまで個人で、自分のシステムの音をYouTubeで公開している人はけっこういたが、
それが今年はオーディオ関係者に広がってきている。
そうなると、これまで、こういうYouTubeの動画を見てこなかった人、
関心を持たなかった人も、ちょっとたけ見てみようかな、と思うようになるかもしれない。
たぶんいるはずだ。
どのくらいいるのかまでは調べようがないけれど、
YouTubeを通じて、オーディオ機器の音を聴くことに関心を持ち始めた人は、
昨年までよりも増えていよう。
関心をもっただけの人もいるだろうし、
関心をもって実際に聴いてみた人もいるだろう。
今年になってはじめて聴いた人のなかには、
ストリーミングで音楽を聴くことに抵抗感、もしくは避けてきた人もいるだろう。
でも実際に聴いてみることで、そういう抵抗感が薄れてきた人もいるのではないだろうか。
コロナ禍によって、TIDAL、mora qualitas、Amazon Music HDを試してみよう、
e-onkyoも試してみよう、という人が、少ないかもしれないが現れてきているに違いない──、
そう期待している。