トーンコントロール(その9)
トーンコントロールは、以前は多くの人が使っていた、と思う。
トーンコントロールがジャマモノ扱いされるようになったのは、
マークレビンソンのJC2の登場の影響は無視できないだろう。
薄型アンプの流行をつくったともいえるJC2だが、
それ以上にトーンコントロールの省略の兆しをつくったアンプでもある。
国産のアンプでもトーンコントロールを省いた製品が登場しはじめたし、
トーンコントロールはついていても、
トーンディフィート(バイパス)スイッチがついていて、
トーンコントロールの回路自体を信号が経由しないようにする機能がつくようにもなった。
プリメインアンプも同じだった。
トーンディフィートスイッチが当り前になってきたし、
トーンディフィートをONにすれば、
回路を一つ経由しないわけだから、いわゆる音の鮮度は向上する。
トーンディフィートスイッチをON/OFFしても、
音の違いが少ないアンプがいいアンプでもある──、
そういうこともいわれたが、トーンコントロールはジャマモノ扱いされていった。
トーンコントロール回路を最初から省いてしまえば、
その分コストが浮くし、
浮いたコストの分だけ価格を安くもできるし、
浮いたコストを、他のところにかければ、性能向上もはかれる。
ある世代から下は、CDが当り前のメディアであって、
LP(アナログディスク)を見たことも聴いたこともないのが普通になった。
いまアナログディスクブームだから、そうでもないだろうが、
とにかく、トーンコントロールがジャマモノ扱いされることで、
トーンコントロールなんて、一度も使ったことがない──、
というオーディオマニアがいても不思議ではないのかもしれないし、
いまはそういう時代なのだろうか。
そこに、DSPを使ったメリディアンのトーンコントロール機能が、
ひっそりと登場した(あえて、ひっそりをつけ加えた)。