Date: 7月 27th, 2018
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CHARLES MUNCH/THE COMPLETE RECORDINGS ON WANER CLASSICS(その1)

五味先生が、「ラヴェル《ダフニスとクローエ》第二組曲」で、
シャルル・ミュンシュについて書かれていたのを読んだは、もうずっと昔のこと。
     *
 この七月、ヨーロッパへ小旅行したおり、パリのサントノレ通りからホテルへの帰路——マドレーヌ寺院の前あたりだったと思う——で、品のいいレコード店のショーウインドにミュンシュのパリ管弦楽団を指揮した《ダフニスとクローエ》第二組曲を見つけた。
 いうまでもなくシャルル・ミュンシュは六十三年ごろまでボストン交響楽団の常任指揮者で、ボストンを振った《ダフニスとクローエ》ならモノーラル時代に聴いている。しかしボストン・シンフォニーでこちらの期待するラヴェルが鳴るとは思えなかったし、案のじょう、味気のないものだったから聴いてすぐこのレコードは追放した。
 ミュンシュは、ボストンへ行く前にパリ・コンセルヴァトワールの常任指揮者だったのは大方の愛好家なら知っていることで、古くはコルトーのピアノでラヴェルの《左手のための協奏曲》をコンセルヴァトワールを振って入れている。だが私の知るかぎり、パリ・コンセルヴァトワールを振ってのラヴェルは《ボレロ》のほかになかった。もちろんモノーラル時代の話である。
 それが、パテ(フランスEMI)盤でステレオ。おまけに《逝ける王女のためのパバーヌ》もA面に入っている。いいものを見つけたと、当方フランス語は話せないが購めに店に入った。そうして他のレコードを見て、感心した。
(中略)
 シャルル・ミュンシュの《ダフニスとクローエ》そのものは、パリのオケだけにやはりボストンには望めぬ香気と、滋味を感じとれた。いいレコードである。
 他に《スペイン狂詩曲》と《ボレロ》が入っている(レコード番号=二C〇六九=一〇二三九)。もちろんモノを人工的にステレオにしたものゆえ優秀録音とは今では申せない。だが拙宅で聴いたかぎり、十分鑑賞に耐えるものだったし、アンセルメやピエール・モントゥとはまた違った味わいがあった。クリュイタンス盤より、そして私には好ましかったことを付記しておく。
     *
これを読んだ時から、ミュンシュのこのレコードを買おう、と決めていた。
けれど、当時なかったように記憶している。
私の探し方が足りなかったのか、廃盤になっていたのか、
そのへんはさだかではないが、聴くことはできなかった。

かといってミュンシュ/ボストン交響楽団のレコードを買う気にはなれなかった。

ミュンシュ/パリ管弦楽団のレコードは、ラヴェル以外にも優れた演奏が残されていることも、
すこし経ったころに知る。
ブラームスの交響曲第一番であったり、ベルリオーズの幻想交響曲などである。

結局、これらのミュンシュ/パリ管弦楽団の演奏を聴いたのはCDになってからだった。

9月にワーナー・クラシックスから、
CHARLES MUNCH/THE COMPLETE RECORDINGS ON WANER CLASSICSが出る。
EMIとエラートに残された録音が、13枚組のCDボックスで出る。

パリ管弦楽団だけでなく、
ラムルー管弦楽団、フランス国立管弦楽団、パリ音楽院管弦楽団との演奏も含まれている。
コルトーとの《左手のための協奏曲》も、もちろんだ。

この手のボックスものの例にもれず、この13枚組も安価だ。
五味先生が書かれているような、旅先で偶然、こういうレコード店に出会して、
存在を知らなかった、いいレコードに巡り合うという楽しみは、CDボックスにはない。

けれど、ありがたいことではある。

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