真空管バッファーという附録(その3)
トータルの位相を正相にしたところで、
真空管のカソードからとプレートからとでは、取り出す信号のレベルが違う。
プレートから取り出せば増幅された信号になる。
それに出力インピーダンスも、カソードフォロワーよりもかなり高くなる。
ならば真空管で一段増幅したあとに、抵抗を直列に挿入する。
たとえばコントロールアンプの入力インピーダンスが10kΩだとしたら、
直列に挿入する抵抗を10kΩにすれば、信号レベルは-6dBになる。
そして真空管から見た負荷は、
コントロールアンプの入力インピーダンスの10kΩ+挿入抵抗の10kΩで、20kΩとなる。
そんな乱暴な……、と思われるかもしれないが、
真空管バッファーをわざわざ挿入するぐらいであれば、
このくらいやってもいいではないか、と割り切ることも必要ではないのか。
もちろんどんな抵抗でもいいというわけではない。
良質な抵抗にかぎる。
真空管バッファーを通ることで、何かが失われ何かが足される。
その結果が、聴き手にとって心地よければそれでいい、という世界なのだから、
抵抗を挿入して、それで心地よい結果が得られれば、私はそれでいいと思う人間だ。
真空管バッファーを一種のトーンコントロールと書いたが、
現実のトーンコントロールでは、バイパスした音と経由した音の差がないのが理想である。
まったく同じにはならないわけだが、それでも極力差は小さい方が、
挿入されるトーンコントロールの性能は優秀ということにもなる。
けれど真空管バッファーは一種のトーンコントロールではあっても、
実際のトーンコントロールなわけではない。
周波数特性を変化させるものではない。
挿入することで帯域バランスは変化することもあるが、
それは周波数特性を変化させての結果ではない。
そういうものであるならば、はっきりとした音の変化があったほうが、
それが好ましい方向に、常にではなくとも、
あるディスク(曲)に関してはそう働くのであれば、切替えスイッチを積極的に使うことになろう。
その意味では、ラックスのD38uのvacuum tubeポジションは、
消極的すぎないか、と思ったりするわけだ。