情報・情景・情操(その7)
過去のオーディオ機器、その中でもスピーカーシステムに関しては、
いまでも、というか、いまだからこそ、一度聴いておきたいモノがいくつかある。
そのひとつが、ビバリッジのSystem2SW-1という、コンデンサー型によるメインスピーカーと、
コーン型のサブウーファーから構成される、やや特殊な設置方法を要求するモノ。
ステレオサウンド 50号の新製品紹介欄で、井上・山中両氏によってとりあげられている。
System2SW-1のメインスピーカーユニットは、高さ198.3cmというかなり大型のエンクロージュア内に、
フルレンジのコンデンサー型ユニットをおさめ、その前面に紙にプラスチックを含浸させた素材で、
音響レンズの一種、というか、コンプレッションドライバーのイコライザーに相当するものを配置、
この音道をとおることで、コンデンサー型ユニットから発せられる平面波を球面波へとし、
水平方向180度の円筒状の波形(シリンドリカルウェーヴ)をつくりだしている。
しかも特徴的なことはほかにもある。
設置場所は左右の壁に向い合わせになるように、というのがメーカー側の指示。
シリンドリカルウェーヴのスピーカーならではの設置方法といえよう。
指向特性の狭いスピーカーだったら、こういう置き方には向いていない。
100Hz以下を受け持つサブウーファーは、メインスピーカーの斜め後方、
つまり一般的なスピーカーの設置場所に近いところだ。
System2SW-1がどんな音だったのか、どんな音場を再現してくれるのか、
ステレオサウンドの記事を読みながら、強い関心をもっていたけど、
音どころか、実物を見る機会すらなかった。
前述の記事中では、
井上先生が、音像自体が立体的に奥行きをもって浮び上ってくる、と言われている。
さらに、オペラを聴くと、歌手の動きが左右だけでなく、少し奥のほうに移動しながら、
右から左へと動いた感じまで再現し、その場で実際にオペラを観ている実在感につながる、と。
山中先生も、通常のスピーカーの、通常の置き方よりも、
楽器の距離感を驚くほどよく出し、協奏曲での、独奏楽器とオーケストラとの対比がよくわかる、と。
これを書くためにステレオサウンドを読み返していると、System2SW-1を聴きたい気持が強くなってくる。