ステレオサウンドについて(その111)
誌面から直接音が聴こえてくるのならば、オーディオ雑誌は苦労しない。
音は聴こえてこない。
誌面からは直接熱も伝わってこない。
このことは編集部で働くことで実感したことだ。
ステレオサウンドは総テストを主として行ってきた。
総テストのやり方はいろいろ試してきていた。
そしてある程度は掴んでいた、と思う。
総テストは、ステレオサウンド編集部の得手であった、少なくともこのころは。
ステレオサウンド 60号の特集は、大型スピーカーシステムのテストといえばそうではあるが、
総テストという性格の企画ではないし、そういう記事づくりもやっていない。
そうなるとステレオサウンド編集部の不得手な面が出ているのではないだろうか。
こういう記事(企画)だと、作り手側の熱を伝えたからといって、
読み手が熱っぽく読んでくれるとは限らないことを、
編集の仕事をやっていた実感するようになっていった。
作り手側の熱と読み手側にとっての熱と感じるところには、
相違があるのを知らなければならないことも学んだ。
60号の特集は座談会としてまとめられている。
うまくまとめられている、とは思う。
読んで得られることもあった。
でも熱っぽくは、どうしても読めなかった。
その理由を考えずに、編集の仕事はできない。
ステレオサウンド 60号を、熱っぽく読んだ、という人がいたら教えてほしい、
それは思い込みでなく、ほんとうに熱っぽく読んだのか、
どう熱っぽく読んだのかを。