Date: 9月 22nd, 2016
Cate: 日本のオーディオ
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日本のオーディオ、これまで(ラックスCL32・その3)

CL32が登場したころ、ラックスの真空管のコントロールアンプは、
CL35IIIとCL30が現役だった。

CL35IIIは型番末尾の「III」が示すように二回の改良を受けたロングセラーモデルだった。
プリメインアンプのSQ38FD/IIも四回の改良を受けている。

ラックスは、このころ国内の他メーカーよりも息の長い製品をいくつか出していた。
そういう背景があったから、私は勝手にCL32もCL32II、さらにはCL32IIIまで出て、
SQ38FD/IIに次ぐロングセラーモデルになってくれるでは……、と期待していた。

キット版のA3032(88,000円)でも、すぐに買えるわけではない。
買えるのがいつになるのかは学生だったから、わからない。
ただ先のことだ、というのははっきりしていて、
そのころにはCL32もモデルチェンジしているだろうなぁ……、ぐらいに思っていた。

1980年、CL32はCL34となった。
CL32IIではなかった。

CL32にはトーンコントロールがついていなかった。
かわりにラックス独自のシーソー式に高低のバランスを変化させるリニアイコライザーだった。

瀬川先生はステレオサウンド 43号に、
《旧録音を含めて数多くのレコードを楽しみたいとき、ラックス得意のリニアイコライザーだけでは、音のバランスを補正しきれない。簡単なものでもトーンコントロールが欲しい。》
と書かれている。

こういう注文をつけられるということは、CL32を認められていたのでもあろう。
CL34にはリニアイコライザーがなくなりトーンコントロールがついた。
それにともないツマミが増えた。
デザインの変更点はそれだけでなく、電源ONを示す部分が、
CL32の小さな点から、大きめの四角になっている。
言葉で掻けば些細な変更点のように思えるだろうが、
実際の製品を見ると、大きな変更点である。

それからCL32にはウッドケースはなかった。
なかったからこそすっきりした装いで、
真空管アンプであることをことさら意識させないアピアランスに仕上がっていた、ともいえる。

CL34にはウッドケースが用意されていた。
別売ではあったけれど、広告やカタログにはウッドケースを装着した写真がメインだった。

薄型のCL34に、けっこうな厚みのあるウッドケースは、
重いコートを羽織ったようで、熱苦しい、野暮ったい、とも感じられる。

ラックス、どうしたんだろう……、と思っていた。

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