サイズ考(その21)
セレッションSL6の横幅は20cmである。
開発リーダーのグラハム・バンクが当時語っていたのが、
エンクロージュアの横幅が広いと音場感の再現に悪影響をもたらす、ということだった。
エンクロージュアの左右の角からの不要輻射とユニットからの直接音との時間差がある程度以上になると、
人間の耳は感知し、その結果、音場感がくずれてしまうらしい。
スピーカーを左右の壁に近づけすぎると、
スピーカーからの直接音と壁からの一次反射音との時間差が少なくなると、
部屋の響きとしてではなく、音の濁りとして感知されるということは、
以前から言われていたが、エンクロージュアの不要輻射に関しては反対のようだ。
おそらく面と線(エンクロージュアの角)の違い、
反射と不要輻射の違いからくるものだろう。
個人的な意見だが、エンクロージュアの側板の鳴きは、響きが美しければ、
スピーカー全体の音を豊かに響かせてくれると感じている。
スピーカーの角度の振りは、聴取位置から、
エンクロージュアの側板が見えるくらいの方が、時として楽しめる音を出してくれる。
グラハム・バンクによれば、ひとつの目安として、
エンクロージュアの横幅は、人間の左右の耳の間隔と同じにすることらしい。
これよりあきらかに横幅が大きくなると、音質上問題が生じるとのこと。
SL6のウーファー口径の15cmは、
エンクロージュアの横幅をぎりぎりまで狭くしたいことも理由のひとつだったのかもしれない。
日本のスピーカーで、ラウンドバッフルが流行った。左右のコーナーを直角ではなく、丸く仕上げている。
ラウンドバッフルは指向性の改善のためと言われているが、
ある程度低い周波数まで効果があるようにするには、かなり大きいカーヴが必要になる。
ダイヤトーンの2S305くらいのラウンドバッフルでなければ、改善効果は高い周波数に限られる。
にも関わらずカーヴの小さなラウンドバッフルが増えてきたのは、不要輻射を抑えるためである。
直角よりも少しでもラウンドバッフルにしたほうが、
エンクロージュアの左右の角からの不要輻射は減ることがわかっている。