冗長と情調(その1)
トーンアームの実効長は、標準型で9インチ、ロングアームと呼ばれるモノは11ないし12インチ。
だからSMEのトーンアームの型番は標準型が3009、ロング型が3012となっている。
もともとロングアームは、16インチのレコード盤のためのモノである。
テープレコーダーの普及以前、録音放送用に16インチ盤が使われていた。
ずいぶん昔の話だ。
この16インチ盤をかけるには、9インチの実効長のトーンアームでは無理なのだから、
当然のこととして12インチの実効長のトーンアームが不可欠となる。
つまりロングアームは必要から生れてきたモノであり、
音質追求の結果生れてきたモノではない。
もちろんトラッキングエラーに関しては、実効長が長いほど減少していくのだから、
ロングアームにもメリットはある。
だがレコード盤は完全な平盤ではない。
反りや偏芯がまったくないわけではない。
そういうレコードの音溝を正しくトーレスするには、
トーンアームの感度は高くなければならない。
つまりはトーンアームの実効質量は軽い方が、この点では有利であり、
そうなるとロングアームよりも標準型のようが短い分優れていることになる。
ロングアームは、いわば無用の長物なのだろうか。
トラッキングエラー以外は標準型が優れているし、
トラッキングエラーの減少よりも、それ以外のデメリットの影響が大きい。
標準型トーンアームがいい、という人もいれば、私も含めてロングアームに音質的良さを認めている人もいる。
昔からいわれ続けている。
そしてロングアームを支持する・評価する人の多くは、MC型カートリッジ、
それも針圧が重めかやや重めのモノを愛用する人が多い。
オルトフォンのSPU、EMTのTSD(XSD)15といった、
2g以上の針圧を必要とするカートリッジで、しかもヨーロッパ製のカートリッジを愛用する人は、
ロングアームを認める傾向にある、といえる。