バスレフ考(その5)
HIGH-TECHNIC SERIES 4が出たのは1979年春。
約一年前のステレオサウンド 44号、45号、46号の特集はスピーカーシステムだった。
実測データも載っている。インピーダンス特性ももちろん載っている。
これらのグラフをみてわかるのは、典型的なバスレフ型の特性を示すスピーカーシステムの方が、
1977年から1978年の時点で少なくなっていることがわかる。
バスレフ型ならではのインピーダンス特性、
共振のふたつの山ができているのは、エレクトロボイスのSentry V、サンスイのSP-L100、
パイオニアのExclusive 2301、アルテックのModel 19、ビクターのS3000ぐらいである。
意外に少ない。
たとえばアルテックの場合、Model 15とModel 19はどちらもバスレフ型なのに、
インピーダンス特性をみるかぎり、バスレフのチューニングの考え方は違っている。
Model 19の開口部は縦に細長い四角、Model 15は円である。
同じ四角の開口部をもつアルテックの612Cと620Aも、
低い方の山はけっこう高くなりそうではあっても、
掲載されているグラフは20Hzまでであり、それ以下の周波数はどうなっているのかははっきりしない。
けれど低い方の山を可聴周波数限界まで下げるという考え方は、瀬川先生の考え方と一致している。
ただ、ここがオーディオの面白いところなのだが、
だからといって瀬川先生の評価が高いのはModel 15ではなくModel 19であったりする。
JBLはL200、L300、4343、4301、4333などがテストされている。
いずれもバスレフ型だが、低域の共振の山はひとつだけである。
この中では4301がいちばん設計が新しく、インピーダンス特性も、
共振のピークは、他のJBLのモデルよりも抑えられていて、密閉型的な特性のようでもある。
サンスイも、SP-L100ははっきりとバスレフ型とわかる特性だが、
同じシリーズのSP-L150はそうではない。
意図的にメーカーはバスレフのチューニングを、
スピーカーの教科書に書かれていることからははずれたところでやっているともいえるわけだ。