「オーディオのデザイン論」を語るために(その2)
付加価値ということを頻繁に使われるようになったのはいつごろなのか。
私の周りでは1982年あたりからだった。
ステレオサウンドで働くようになってしばらくして、付加価値ということをよく聞くようになった。
性能的に大差なくなった。他社製品との差別化のために付加価値が必要だ。
そんなふうな使われ方をしていた。
編集部の先輩と付加価値とはなんだろう、と話した記憶もある。
とにかく付加価値が必要、そんな感じの空気がこのころからあったように感じている。
付加価値。
生産過程で新たに付け加えられる価値。総生産額から原材料費と機械設備などの減価償却分を差し引いたもので,人件費・利子・利潤に分配される。一国全体の付加価値の合計は生産国民所得となる。
と辞書には書いてある。
だが「差別化のために必要な付加価値」は、辞書通りの意味ではない。
そしてこの付加価値として、デザインがいつしか語られるようになった。
デザインは付加価値だ。
そういう人が少なからずいる。
昔からいる。いまも相変らずいっている人がいる。
しかもそういう人が、オーディオのデザインについての持論を語る。
こんなことがいつまで続いていくのか。
私よりひとまわり以上年上の人たちに、そういう人が少なからずいる。
(失礼ながら)こういう人たちが去ってくれるまで、デザインは付加価値だ、ということが言われつづけていく。