続・再生音とは……(生演奏とのすり替え実験・その1)
1960年代、ビクターが生演奏と録音されたものとのすり替え実験を何度か行っていたことは広く知られている。
この実験は成功をおさめた、と伝えられている。
このすり替え実験の白眉といえるのは50名のオーケストラとのすり替えである。
昭和41年7月14日、虎ノ門ホールにて、第二回ビクターステレオテクニカルフェスティバルとして開催された。
服部克久指揮日本フィルハーモニーの50名のオーケストラによる生演奏とのすり替え実験である。
1621名が実験に参加して、正解した人は14名。1%以下であり成功といえよう。
こう書くと、参加者のほとんどはオーディオに関心のない人たちばかりなんだろう、という人がいる。
だがオーディオ評論家も参加している。
ステレオサウンド 34号、岡原勝氏と瀬川先生による実験記事が載っている。
34号では「壁がひとつふえると音圧は本当に6dBあがるのだろうか?」とテーマで行われている。
この記事にこうある。
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岡原 スピーカーというのは、かなり昔から、そういう意味でのリアリティはありましたね。いわゆるナマと再生音のスリ替えが可能だというのは、音楽が実際に演奏されている場にいけば、相当耳の良い人でも、ナマと再生音を聴きわけることができないためなのです。
瀬川 わたくしもだまされた経験があります。実際オーケストラがステージで演奏していて、そのオーケストラがいつの間にか身振りだけになってしまい、録音されていた音に切り替えられてスピーカーから再生されているという実験があった。先生もあのビクターの実験ではだまされた組ですか?
岡原 ええ、見事にだまされました。似たような実験で、わたしは他人もだましたけれど、あの時は自分もだまされたな(笑)。
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岡原氏も瀬川先生もだまされていた。