prototype(その3)
当時のオーディオ雑誌が手元にあれば、あれこれ思い出せるのだが、
ステレオサウンド以外のオーディオ雑誌はほとんどない。
だから、記憶にあるものだけをいくつかあげていくと、
水冷式のパワーアンプを、ダイヤトーンが展示していたはずである。
ファンによる強制空冷のパワーアンプはある。
当時のアメリカのハイパワーアンプにはたいていファンがついていた。
SAEのMark2500、マランツの510Mなどがあったし、
ファンの音を気にしがちな日本においても、パイオニアのExclusive M4はA級動作ということもあって、
かなり静粛性にすぐれるファンを搭載していた。
それでも聴取位置に近いところに置けば、静かな環境・時間帯ではファンの音が気になる。
ダイヤトーンのプロトタイプがA級動作だったのかはわからないが、
水冷式はA級動作でハイパワーを実現しようとする際には、有効な手段のひとつになり得たかもしれない。
オーディオ雑誌に載っていた小さなモノクロ写真、
それに写真の解説文も短かく、細かなことはなにひとつわからなかった。
だからこそ想像をかき立てられる。
大出力を得るには出力トランジスターの数を増やすことになる。
部品にはすべてサイズがあり、数が増えればそれだけ配置のためのスペースを必要とし、
電子回路であるから配線距離がその分のびることになる。
発熱量の多いA級アンプではヒートシンクも大型のものとなるから、
出力トランジスターへの配線は、より長くなりがちである。