「いい音を身近に」(その4)
身近というくらいだから、己の身体の近くにあること、
それに、つね日ごろ慣れ親しんでいるという意味もあるだろう。
そうなると、やはりメインシステムこそ、「いい音を身近に」ということになり、
先に進めなくなってしまう。
手軽でもなく、気楽でもなく、あくまでも「身近」である。
「身近」は距離をあらわしてもいる。
オーディオにおいては、物理的な距離、心理的な距離だろう。
まず考えていきたいのは、物理的な距離、からである。
短絡的に、スピーカーと聴き手の距離が短い関係こそ、
いわゆるニアフィールドリスニングが「いい音を身近に」であるはずがない。
われわれは、オーディオで音楽を聴くときに、聴きたい曲に応じて音量を変える。
同じ曲でも、聴く時間帯、心理状態によっても音量を変える。
こまめに音量を変える人もいれば、あまりいじらない人もいるだろうが、
まったくいじらない人は、まずいないだろう。
音量は変える。
さらに人によってはトーンコントロールやグラフィックイコライザー、パラメトリックイコライザーをいじって、
もっと積極的に音を変えていく人もいるだろう。
そういう人でも、リスニングポジションを、聴く曲に応じて変える人は、そうはいないだろう。