Archive for category イコライザー

Date: 10月 7th, 2008
Cate: イコライザー

私的イコライザー考(その3)

スピーカーのレベルコントロールをいじれば、クロスオーバー周波数はわずかだが変化する。
2ウェイ・スピーカーのでトゥイーターのレベルをあげると、
クロスオーバー周波数は低い方に移動する。レベルを下げると高い方にスライドする。
3ウェイで、スコーカーのレベルを上げると、ウーファーとのクロスオーバーは低くなり、
トゥイーターとのクロスオーバーは高くなる。

だからレベルコントロールはいじらない方がいいと言いたいわけではない。
必ずしも、各ユニットのカットオフ周波数とクロスオーバー周波数が一致するわけではない。
このことを忘れてほしくないだけである。

3年前に、あるネットの掲示板で、スピーカーのネットワークに関して、
ふたりの方が言い合いをされていた。
そのうちのひとりは、ネットワークが12dB/oct.の場合、
2ウェイならばトゥイーターを、3ウェイならスコーカーを逆相接続にする、
スピーカーの教科書にもそう書いてあるし、
メーカー製のスピーカーもそのようになっていると力説されていた。

たしかに1970年代に出版されていたスピーカーの技術書には、そう書いてある。
間違いではないし、事実、メーカー製の中に逆相接続のモデルもあった。

けれど80年代から12dB/oct.のネットワーク使用でも逆相接続ではなく、正相接続が出てきたし、
おそらく、いまきちんとした技術力をもつメーカーの製品なら、逆相接続はほとんどないはずだ。

音場感の再現を重視すれば、ウーファーとトゥイーターの極性が逆相のままというのはありえない。
たしかに12dB/oct.のネットワークだと、クロスオーバー周波数でディップが生じる。
それから逃げるために片方のユニットを逆相接続するわけだが、
この問題をさける手法は、なにも逆相接続だけではない。
メーカーは確実に技術を進歩させている。

70年代は、ラジオ技術誌や無線と実験誌の別冊として、
スピーカーやプレーヤーに関する技術書が、メーカーのエンジニアによって書かれていた。
いまはその手の本はない。
そのため、上で挙げた例のように古い技術書に書かれていたことを
オウムのように繰り返す人が出てきてもしかたないだろう。

個人攻撃をするつもりはないが、
その人は、ネットワークでタイムディレイは実現できないと断言されていた。
たしかにデジタルディレイのような細かいディレイを実現するのは困難だが、
1977年にはUREIの813が登場している。

Date: 10月 7th, 2008
Cate: イコライザー, 瀬川冬樹

私的イコライザー考(その2)

3年前くらいに思いついたが、まだ試していないイコライザーについて書いてみる。

帯域のバランスを簡単に変化させるのは、スピーカーについているレベルコントロールだろう。
最近のモデルは省いているものが多いが、3ウェイ、4ウェイとなるほど、
レベルコントロールは重宝するといえる。

レベルコントロールの調整といえば、瀬川先生のことが浮ぶが、
ステレオサウンド 38号に井上先生が次のように書かれている。
     ※
システムの使いこなしについては最先端をもって任ずる瀬川氏が、例外的にこのシステムの場合には、
各ユニットのレベルコントロールは追い込んでなく,
メーカー指定のノーマル位置であるのには驚かされた。
     ※
このシステムとは、JBLの4ウェイ・スピーカー、4341である。
その後に使われていた4343も、レベルコントロールはほとんどいじっていない、と
どこかに瀬川先生が書かれていたと記憶する。

そういえばKEFのLS5/1Aはレベルコントロールがない。そのことが不満だとは書かれていないはず。

LS5/1Aにしても、4341(4343)も購入されている。それは気にいっておられたわけだし、
長い時間をかけて鳴らしこめるわけだ。

瀬川先生がスピーカーのレベルコントロールを積極的に使われるのは、
試聴などで、短時間で、瀬川先生が求められる音を出すための手段だったようにも思える。

レコード芸術の連載で、スピーカーは最低でも1年間、できれば2年間は、
特別なことをせずに、自分の好きなレコードを、
ふだん聴いている音量で鳴らしつづけることが大切だと書かれている。

惚れ込んで購入するスピーカーなら、帯域バランスに関しても、
大きな不満を感じられることはなかっただろう。
だからこそ、レベルコントロールをいじらずに、大切に鳴らし込まれていたのだろう。

38号の写真を見ると、4341の下には板が敷かれているが、
板と板の間に緩衝材のようなものを見える。
このあたりの使いこなしは積極的に行なわれていたようだ。

Date: 9月 15th, 2008
Cate: イコライザー

私的イコライザー考(その1)

ラックスのリニアイコライザー、QUADのティルトコントロール、 
名称は異るがどちらもほぼ同じ機能で、ある周波数を中心に、周波数特性をシーソーのように上昇下降させる。 
世の中に登場したのは、リニアイコライザーのほうが先。
QUADがマネをしたのか、リニアイコライザーに刺激をうけてのものなのかはわからないが、
リニアイコライザーの考え方そのものが、なんとなく東洋的な思想によるもののような気もする。 

高域側を2dB上げたら低域側を2dB下げる。低域を上昇させたら、同じレベルだけ高域を下げる。
その中心周波数はつねに同じ(ラックスとQUADでは、たしか中心周波数が異っていたはず)。

つまり、エネルギーの総和はつねに同じになる。 

どこかをあげたら、同じ変化量だけどこかをさげる。 
このことはイコライザーをいじる上で、大事なことではなかろうか。 
もちろん中心周波数をきちんと決めた上で、である。 

リニアイコライザーにしてもティルトコントロールにしても、こまかいイコライジングは無理である。 
ならばもうすこし多ポイントで、リニアイコライザーと同じ思想のものは、どうだろうか。 
たとえば中心周波数を640Hzとする。 
1オクターブ下の320Hzを上昇させたら、 1オクターブ上の1.28kHzを、同じ量だけ下降させる。 
というよりも、この場合、320Hzと1.28kHzのツマミはひとつで、 
センターよりも時計方向に回したら1.28kHzが上昇し320Hzは下降する。 
反時計回りだと、320Hzが上昇し1.28kHzは下降するという具合だ。 

20Hzから20kHzまでは10オクターブ、 
2オクターブ上は2オクターブ下と、3オクターブ上は3オクターブ下と……、
こんなふうにして、ツマミは5つ。 

ユニークなイコライザーの出来上がり、かな。