妄想組合せの楽しみ(その8)
1970年代後半のオーディオ雑誌には、よく素材の比較表が掲載されていた。
鉄、アルミ、チタン、マグネシウム、紙などの、それぞれの剛性、内部音速、内部損失といった項目があり、
スピーカーの振動板に求められる条件──、
軽くて内部音速が速く、剛性も高いという難しいバランスを満たしているものは、
そうそうないことがわかった。
それにしても、スピーカーの振動板に求められる条件は、そのまま自転車のフレームにもあてはまる。
鉄全盛時代から、カーボン、アルミ、チタンが登場し、
数年前にマグネシウム、いまはステンレスのフレームもある。
自転車といえば、朝日新聞社が1976年暮、77年夏、77年暮に「世界のステレオ」という、
縦横30cmという、ほぼレコードジャケットサイズのムックを出していたことがある。
77年の No.2と78年のNo.3に、
傅さんが「オーディオ・マニアのための自宅録音のすすめ」という記事を書かれている。
この中で傅さんが着ているのは、ganチームのチームジャージ。
かつてグレッグ・レモンが属していたチームのジャージ。
ステレオサウンドの「レコード演奏家訪問」に傅さんが登場されたとき、
壁に、赤いフレームのロードバイクがかかっていたことに、
自転車好きの方ならば、すぐに気づかれたはず。
あの写真ではわからなかったが、フレームはコルナゴで、パーツはカンパニョーロということだ。
セレッションの輸入元だった成川商会は、1980年代ぐらいまで、コルナゴの輸入元でもあった。
話がずれてきたまま書くと、意外に思われるかもしれないが、
瀬川先生も、実は録音の経験をお持ちだった、ということを1ヵ月ほど前に、友人のKさんに聞いた。
詳細は話されなかったそうだが、それでも「録音は難しい……」と呟かれた、とのこと。