音の毒(オイロダインのこと・その4)
ポリーニの実演は、20代前半のころ、一度聴いている。
1986年だったはず。
確かベートーヴェンのピアノ・ソナタを聴いている。
そのぐらいしか、もう憶えていない。
感動しなかったからだろう。
五味先生のように激怒ということだったら、
それはそれで記憶にしっかりと残っているはずだから。
ポリーニをきちんと聴いてきたとは、言わない。
そんな私でも、アバドとのバルトークのピアノ協奏曲第一番は、
初めて聴いた時ももちろん、それから何度となく聴いているが、
聴くたびに、凄いと思う。
極端な言い方になるが、私にとってのポリーニは、
このバルトークの曲のためだけの存在となる。
自分でも不思議に思っている、
なぜ、バルトークの一番だけなのか、と。
答が見つかったわけではないが、
バルトークのピアノ協奏曲第一番は、
ピアノを打楽器として使うという曲に関係してことだろう。
いまは、そう感じている。
ポリーニは、バルトークの第三番は弾いているのだろうか。
REPLY))
ポリーニの86年の来日演奏をお聴きになったのが20代だと、ちょうど僕が76年の来日演奏を聴いたのが20代半ばだったのと10年ぐらい違うんんだなあと思いました。86年と言うのは日本の金準備高が世界一になり、日本の企業がマンハッタンの地所を買い漁るようになる序曲の頃です。僕は留学中でしたが実験をサボってカーネギーでゼルキンのベートーヴェンを聞いたものです。あの頃は日本よりずっと安価でしたし。
僕が一番大切にしているのは全曲演奏のないゼルキンですが、アルベルティバスの響きの美しいバックハウスや、ハンマークラヴィアでさえ歌う線の綺麗なケンプなどをLPで愛していた耳に衝撃を与えてくれたのが、あの頃のポリーニでした。ちなみにバルトークはゼルキンも1番だけは若い頃の演奏が残っていて、友人が帰国祝いに送ってくれたLPを今でも大切にしています。3番はなぜ弾いてくれないんだろうと昔思っていました。