シューベルト 交響曲第九番
二十代半ばごろ、シューベルトの交響曲第九番を、
ほぼ毎日、誰かの指揮で聴いていた時期があった。
けっこうな数のシューベルトの九番を聴いた。
そうやって聴いたなかに、ジュリーニ/シカゴ交響楽団の一枚も含まれていた。
1977年録音である。
ジュリーニは十六年後の1993年にふたたび録音している。
1977年はドイツ・グラモフォン、
1993年はソニー・クラシカルで、オーケストラもバイエルン放送交響楽団である。
ジュリーニ久しぶりのシューベルトということで期待して聴きはじめた。
けれど第一楽章から、あれっ? と感じていた。
シカゴ交響楽団との演奏とはずいぶん違う。
そのことは別にいい。
同じであることを期待していたわけでもない。
けれど、いまのジュリーニならば──、とこちらが勝手に期待していた出来とは、
なんとなく違う。
もっと素晴らしい演奏が聴けるのでは……、
そんなことを思いながら第二楽章も聴きおえた。
これが他の指揮者だったら、ここで聴くのをやめていたかもしれないが、
ジュリーニへの思い入れが、こちらにはあるものだから、聴き続ける。
それにしても第三楽章の美しさは、
第一楽章、第二楽章とやや退屈していたこちらの気持が見透かされていたのかも──、
そんなありえないことを一瞬おもってしまうほどに、美しい。
素敵といってもいい。
それまでかなりの数のシューベルトの九番を聴いてきたけれど、
第三楽章が、こんなにも美しいと感じたことはなかった。
涙が流れそうになるくらいの美しさがある。
今回、TIDALでMQA Studio(44.1kHZ)であらためて聴いた。
やはり第三楽章の美しさは色褪ていないどころか、
MQAのおかげなのか、そしてこちらが齢を重ねたこともあるのだろうか、
あの時以上に美しく響いてくれる。