Date: 12月 2nd, 2020
Cate: オーディオ評論
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二つの記事にみるオーディオ評論家の変遷(その6)

ステレオサウンド 51号に「♯4343研究」が載っている。
JBLのゲーリー・マルゴリスとブルース・スクローガンが、
ステレオサウンドの試聴室で4343のチューニングを行う、という記事である。

この記事中、ゲーリー・マルゴリスは、
4343はユニットの配置の関係から、音のバランスがとれる最低の距離は2mだ、と語っている。
つまり2m以上離れた位置で聴いて、
音のバランスがとれるようにネットワークのレベルコントロールを調整してほしい、ということだ。

2mよりも短い距離では、個々のユニットの音をバラバラに聴くことになり、
最適なバランスが掴めない、とのことだ。

マルチウェイ・マルチスピーカーの場合、ひとつの目安として、
最も離れているスピーカーユニットの中心と中心との距離の三倍以上離れて聴くこと。

4343の場合、ウーファー2231Aとトゥイーターの2405、
それぞれの中心の距離の三倍が約2mということである。
4343よりも大型の4350の場合、約2.5m離れることになるわけだ。

同軸型ユニットの場合はというと、トゥイーターとウーファーの中心は一致している。
理屈のうえでは、ぐっと近づいてもいいことになるわけだ。

51号は1979年夏に、「HIGH-TECHNIC SERIES-4」は1979年春に出ている。
だからこそ、どちらの記事も記憶にはっきりと残っている。

KEFのModel 105を聴いたのも、このころである。
Model 105は30cm口径ウーファーで、38cm口径の4343よりも、
ウーファーとトゥイーターの距離は近い。
2mも離れる必要はない。

それに中高域ユニットのエンクロージュアを聴き手に向けて調整できる。
熊本のオーディオ店で聴いたときも、三倍程度は離れていた。

どんなにきちんと調整されたとしても、
Model 105にぐっと近づいて聴いていたら、どうなっていただろうか。

マルチウェイ・マルチスピーカーユニットでも、Model 105のような例はある。
同軸型ユニットが、すべての条件において音像定位が優れているわけではない。

このことがごっそり抜け落ちたままで、単に音を聴いての、
《よくコアキシャルは定位がいいとはいうが、それは設計図から想像したまぼろしだ》
という感想のような気もする。

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