「新しいオーディオ評論」(その19)
取材・試聴が大変だった号がよく売れ、
そうでない号はあまり売れないのであれば、話は違ってこよう。
けれど現実は必ずしもそうではない。
(その17)で書いているように、
二冊のチューナー特集号の取材・試聴は大変だったはず。
けれど売れない。
チューナー特集号のころは、すでにFM放送がブームになっていた時期のはず。
それでも売れなかったのは、不思議な気もする。
ステレオサウンドの読者は、あまりチューナーに関心がなかったのか。
そのくらいしか理由は思い浮かばない。
そのころの原田勲氏は、
株式会社ステレオサウンドの社長(経営者)であり、
季刊誌ステレオサウンドの編集長であった。
編集者としてやるだけのことはやった、と自負できる号が売れていれば、
社長としての原田勲と編集長としての原田勲は仲良くできただろうが、
現実はそうでもなかった。
雑誌は売れ残れば返本される。
前の号の売行きが芳しくないと、書店に置かれる数にも影響してくる。
それに返本された分に関しても、保管して置くためのスペースが要り、
それには費用も発生するし、売れなかった本とはいえ、それは資産として扱われる。
だから裁断処分されることになる。
これにも費用がかかる。
売行きは安定してほしい。
経営者は誰もがそう考えるはずだ。
そのためにどうするか。
ここまで書けば十分だろう。
つまりステレオサウンドを変えてしまったのは、
特集の内容によって買ったり買わなかったりしていた読者でもある。