現代真空管アンプ考(その18)
ここまでやるのならば、ヒーター点火の周波数を50Hz、60Hzにこだわることもない。
もう少し高い周波数による交流点火も考えられる。
十倍の500Hz、600Hzあたりにするだけでも、そうとうに音は変ってくるはずだ。
そのうえで定電流でのバランス点火とする手もある。
つまりヒーター用電源を安定化するということは、
真空管のエミッションを安定化するということであり、
ヒーターにかかる電圧を安定化するということではない。
エミッションの安定化ということでは、重要なパラメーターは電圧ではなく電流なのだろう。
そうなると定電流点火を考えていくべきではないのか。
300Bだろうが、EL34、KT88だろうが、真空管全盛時代のモノがいい、といわれている。
確かに300Bをいくつか比較試聴したことがあって、刻印タイプの300の音に驚いた。
そういう球を大金を払って購入するのを否定はしないが、
そういう球に依存したアンプは、少なくとも現代真空管アンプとはいえない。
現代真空管アンプとは、現在製造されている真空管を使っても、
真空管全盛時代製造の真空管に近い音を出せる、ということがひとつある。
そのために必要なのは、エミッションの安定化であり、
それは出力管まで定電流点火をすることで、ある程度の解決は見込める。
もちろん、どんなに優れた点火方法であり、100%というわけではないし、
仮にそういう点火方法が実現できたとしても、
真空管を交換した場合の音の違いが完全になくなるわけではない。
それでも真空管のクォリティ(エミッションの安定)に、
あまり依存しないことは、これからの真空管アンプには不可欠なことと考える。