The Unknown Kurt Weill
発売になったばかりのレコード芸術の5月号は創刊800号とある。
1952年3月号に創刊号であるから、65年である。
私が買うようになったときにはすでにレコード芸術だったが、
ずっとは以前はレコード藝術だった。
私が熱心に読んでいたのは1980年代の10年間だった。
オーディオ雑誌よりも発売日を楽しみにしていた時期でもあった。
1990年の半ばごろから、どこか惰性で読んでいる気がしてきた。
それでも毎号買っていたけれど、いつごろだったか、それもやめてしまった。
いまでは新譜情報はインターネットのほうが早いし便利でもある。
レコード芸術を書店でみかけても、手にとることすらしなくなっていた。
それでも「創刊800号」と表紙にあれば、手にとる。
「わたしと『レコード芸術』——思いでの1枚」という記事がある。
30人の筆者が、それぞれの一枚について書かれている。
増田良介氏が、
テレサ・ストラータスの「知られざるクルト・ワイル(The Unknown Kurt Weill)」を挙げられていた。
1983年に発売になっている。
CD登場後一年ということもあってだろうか、
録音レベルはかなり抑えめであった。
岡先生はワイル好きでもあった。
ステレオサウンド連載のクラシック・ペスト・レコードで取り上げられていた。
試聴ディスクとしても使われていた。
そうやって知った一枚だ。
ワイル好きの岡先生でも知らない曲が多い、ということだった。
それまでクルト・ワイルの曲をきちんとしたかたちで聴いてこなかった私にとっては、
ほとんど初めてのクルト・ワイルといえた。
それだけによけいに新鮮に感じた。
よく聴いた。
八曲目の「ユーカリ(Youkali: Tango Habanera)」は、口ずさむこともあった。
歌詞を憶えていたわけではない。
サビの部分だけを口ずさんでいた。
いまも思い出して、口ずさむことがある。