Date: 2月 23rd, 2016
Cate: ステレオサウンド
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ステレオサウンドについて(その16)

ステレオサウンド 44号、45号のスピーカーシステム総テストにおいて、
瀬川先生が使われた試聴レコードは、八城一夫の“SIDE by SIDE Vol.3”の他に、
カラヤン/ベルリンフィルハーモニーによるベートーヴェン序曲集、
ギレリスのピアノ、ヨッフム/ベルリンフィルハーモニーによるブラームスのピアノ協奏曲、
ウィーンフィル室内アンサンブルによるベートーヴェンの七重奏曲Op.20、
フィッシャー=ディスカウによるシューマンのリーダークライス、
これらはすべてグラモフォンである。

あとはバルバラの「孤独のスケッチ」(フィリップス)、
テルマ・ヒューストンの「アイヴ・ゴッド・ザ・ミュージック・イン・ミー」、
このディスクはシェフィールドのダイレクトカッティング盤である。

さらに、その他、数枚適宜使用、とも記してある。

これらすべてのレコードについても、“SIDE by SIDE Vol.3”についてと同じように書かれていたら……、思っていた。
いまも思う。

《クラシックから歌謡曲まで、一枚一枚のレコードについて言い出せば、ゆうに本誌一冊分も書かなくてはならない》、
そう書かれているぐらいだから、
定期刊行物であるステレオサウンドにそれを求めるのは無理としても、
別冊というかたちで出版してくれていたら……、と思っていたし、いまも思っている。

オーディオは趣味だから……、という発言をこれまでに何度も耳にしてきた。
これから先も何度も聞くはずだす、目にするはずだ。

「オーディオは趣味だから……」の「……」のところ。
これを口にする人は「……」のところをどう考えているのだろうか。

中には趣味なのだから、好き勝手に聴けばいい、という。
この手のことを聞くたびに(目にするたびに)、
瀬川先生が《一枚一枚のレコードについて》、ステレオサウンド一冊分を書いてくれていたら……、とやはり思う。

瀬川先生だけではない、他の方々も書かれていたら、どうなっていただろうか。
ステレオサウンド 44号、45号での黒田先生の試みも、ここだけで終ってしまった。

黒田先生の試みは、そこに登場するレコードを持っていなかった(聴いていなかった)者にとっては、
わかりにくい、もしくは音をイメージしにくい面もあったし、
いま読んでも、このままでは試みとしては未熟な面があるといえるけれど、
なぜ、このような試みをあえてされたのかは、よくわかる。

「オーディオは趣味だから……」と簡単に口にするような人には伝わらないことだと思っている。

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