オリジナルとは(モディファイという行為・その4)
CDプレーヤーのヘッドフォン端子への配線を取り外すのは可逆的ではあるが、
これも誰がやっても必ず可逆的であるかというと、決してそうとはいえない。
ヘッドフォン端子への配線を取り外すことで音が変化するのは、
CDプレーヤーの筐体内には、さまざまな高周波ノイズが飛び交っている。
井上先生はデジタル機器では、ひとつひとつのIC(LSI)が小さな放送局だといわれていた。
消費電力の大きいLSIは、出力の大きな放送局ともいえるわけで、
それだけ不要輻射も大きくなると考えていい。
つまりCDプレーヤーは自家中毒を起しているとも考えられる。
自分が輻射しているノイズに影響を受けているわけだから。
そんな不要輻射を、ヘッドフォン端子への配線がアンテナとなって拾ってしまう。
ヘッドフォン端子への配線を取り外すことは、CDプレーヤー内部のアンテナ、
それももっとも長いアンテナをなくすことにつながる。
ヘッドフォン端子への配線が最少限の長さであれば、
取り外した後無造作に元に戻したとしても、
元の状態と配線の引き回しの仕方が大きく変化することはない。
けれどある程度余裕のある長さであれば、
元と同じ引き回しの状態に戻さなければ(戻せなければ)、可逆的とはいえなくなる。
可逆的な非可逆的かは、既製品に手を加える人によって、その境界が変動するものであり、
絶対的な可逆的な、既製品への手の加えるという行為はそう多くはない。