同軸型はトーラスなのか(その15)
井上先生が、サイテーションXXを気に入っておられることは、
試聴に立ち会っていれば、自然と伝わってくるし、
ステレオサウンドのベストバイの短いコメントの中にも、はっきりとあらわれている。
サイテーションXXの設計にたずさわったマッティ・オタラ博士は、
ステレオサウンド 57号のインタビュー記事の中で、NFBをアスピリンに喩えている。
「もし、私の頭が痛くなかったら、アスピリンはいらないでしょう。アンプがよければ基本的にはNFBはいらない。しかし、頭がちょっと痛ければ、ほんの少しのアスピリンでずっとよくなるでしょう。アンプも少し悪いのなら、ほんの少しのNFBをかけることでよくなるでしょう。10kgのアスピリンを飲んだら死んでしまうのと同じように、NFBをかけすぎるとアンプの音も死んでしまう。
私はたしかにNFBをたくさんかけてはいけない、NFBは少ないほどいい、といってきました。と同時に、NFBは上手に使うと非常に有効であることもいってきたつもりです。NFBの非常にいいポイントをさがすとゼロよりはいい。もちろん、ここでいう良いというのは、測定値のことをさしているのではなくて、聴感上の歪ということです。」
つまりサイテーションXXのNFB量9dBは、聴感上の歪が少なくなる最適量ということになる。
サイテーションXXの手法だけが、NFBの問題点を解消するわけではない。
日本のメーカーからも、この問題に違う視点から、しかし真っ正面からとりくんだ結果のアンプ技術がある。
テクニクスのリニアフィードバック回路と、サンスイのスーパー・フィードフォワード・システムだ。