Digital Integration(デジタルについて・その9)
ケーブルによる伝送の場合、インピーダンスに不整合があれば信号が反射される。
このことは知識としては知っていた。
特に高周波においては顕著であるからこそ、
デジタル信号の伝送経路であるトランスポートD/Aコンバーター間は、
コンシューマーオーディオのライン信号の受け渡しで常識となっているやり方──、
送り出しはローインピーダンスで受ける側はハイインピーダンスと設定(ロー出しハイ受けともいう)ではなく、
75Ωということでケーブルのインピーダンスまで規定されている。
その部分に、ケーブルのインピーダンスなどあまり問題とされないラインケーブル(アナログ信号用)を使う。
単純に考えれば反射が、75Ω規格のケーブル使用よりも多く発生するのだろうから、
それだけ音は悪くなる可能性がある。
そんなことをぼんやりと思いながらも、ラインケーブル数種を試しにデジタルケーブルとして使ってみた。
すくなくとも明らかな音の劣化は、そのときは感じられなかった。
むしろ気がついたのは、別のことだった。
ケーブルを変えたときの音の傾向が、
ラインケーブルとして使った時の音の傾向とほぼ同じであることに気がついた。
このことは正直意外だった。
ラインケーブルとして使った時、そのケーブルに流れるのはいわばアナログ信号。
アナログ信号の帯域幅は広い。
デジタル信号のように非常に高い周波数の信号よりはずっと低い周波数帯ではあるけれど、
20Hzから20kHzまでは10オクターヴある。
デジタル信号はオーディオの音声信号よりずっと高い周波数であっても、帯域幅はそれほど広くはない。
信号の波形だって違う。
にも関わらず、ケーブルを変えたときの音の傾向は、
そこを流れるのがアナログであろうとデジタルであろうと、ある共通したところがはっきりとある。
この現象のもつ意味を深く考えるようになったのは、数年後であった。
REPLY))
業務用DACで有名なのMytek Digitalの代表Michalと懇意にしていますが、彼はスタジオ用マイクケーブルなどのアナログケーブルも110オーム(Mytekは業務機なのでデジタルデータ転送はAES/EBU)の高品質デジタルケーブルを使用したほうがいいとかなり強く主張していますね。実際、Mytekの自社ケーブル自体もデジタル/アナログともにまったく同じ素材です。業務用ADC/DACのメーカーなので、基本的にはWire with Gainを目指していると思いますが、その方向性でいうと伝送系はインピーダンスを均一にすることが最良との思想だと思います。
スタジオ機器でも昔の600オームトランス伝送時代の優位性が再認識されてきていますし、MCトランスでも明らかにインピーダンス整合した方がいいと思われますので、現在主流のロー出しハイ受けということに関してはもう一度再考する余地もあるのかな、と感じています。